見出し画像

セーヌ川の水面の下に(2024) ふざけないタイプのフランス産サメ映画

 フォローしているnoterさんが紹介しており、何やら話題になっているようなので早速鑑賞した。もうね、こちとらサメと聞くだけでシャークトパスだのシャークネードだの、覚えているだけで脳のメモリがもったいないようなB級映画ばかり浮かぶんですよ。それらの良さもあるが、本作は至って真面目にかつリアルに作られていて、オリンピックを控えたパリの事情なんかも織り交ぜているので、今ニュースでやってたら思わず信じてしまいそうな内容に仕上がっている。

〈あらすじ〉
 オリンピック開催を控えたフランス、パリ。サメの生態を研究しているソフィアは、悲しい事故を乗り越え海洋保護のために活動していた。そんな中、パリ市内のセーヌ川にかつてソフィアたちを襲った巨大ザメが現れる。ソフィアと水上警察は協力してサメの被害を食い止めるために奔走するが...

〈感想〉

 ソフィアや警察は市民を守るため巨大ザメ「リリス」の駆除に乗り出すのだが、若者を中心とした環境保護団体(Save Our Sea:SOS)が真っ向から対抗するという展開は、まさに今の時代にマッチしている。彼らは「サメを救おう」とSNSで発信し、それを観た若者が地下の用水路に大集合。もちろん容赦なくリリスに襲われ、地下水はみるみる真っ赤に染まっていく。意識高い系大学生が食人族にもぐもぐされてしまうグリーンインフェルノのような皮肉の効いたシナリオだ。

 パニック映画ながら襲われる→逃げるだけの構図ではなく、ちゃんと社会的なメッセージを盛り込んでくる手腕はさすが。ジュラシックワールドと言い、定番パニック映画も時代に合わせてアップデートしてきている。

 なんだか昨今の日本のクマ事情とも重なるものがあり、つくづく動物たちと共生することの難しさ、もっといえば我々人間の価値観の多様性について考えてしまう。SOSの主張も完全に間違っている訳ではないが、野生動物の持つ力を舐めてかかるのもまたリスペクトに欠けるというか、人間の傲慢だなと感じる。人智を超えた生命や自然現象への畏怖の念を忘れてはいけないよなーと思う。でもパリ市長、あんたは間違ってる。人が話してる時は食べる手を止めなさい。

 R16作品だがグロ描写はそこまでキツくなく、ちょっと上半身と下半身が仲違いするくらいなので、普段から魑魅魍魎の映画を見慣れている方なら大丈夫だと思う。ラストは好き嫌いが分かれそうだが、ある意味ホラー映画っぽいといいますか、ジェイソン・ステイサムもいないし仕方ないのかなと。

 個人的には警官のアディル(ナシム・リエス)がイケメンすぎて、ソフィアと良い感じだったのでキスの一つくらいして欲しかったが、何ともいじらしい距離感のまま終わってしまった。まぁこういう煩悩にまみれたやつは映画開始5分でサメに食われる役回りなので、ここはひとまず大人しくしておこう。

 Netflixオリジナル作品でサメまみれのParisを堪能してみてはいかがだろうか。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?