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悪魔はいつもそこに(2020)ー素晴らしきかな、人生。

 豪華キャストが織りなすのは世にも暗い物語。たかがNetflixオリジナルとなめてかかったら半日は落ち込む羽目になる。本物の悪魔が出てくる訳ではないのだが、登場人物たちに降りかかる悲劇はまさに「悪魔」の所業としか思えない。体調の良い時に観ることをお勧めするが、私はこの重厚すぎる作品がどうしようもなく好きだ。

〈あらすじ〉

オハイオ州の田舎町。幼い頃に両親を相次いで亡くしたアーヴィンは、祖母の元で義妹レノラとともに育つ。亡き父にまつわるトラウマを抱えながらも、愛する家族を守ろうともがくアーヴィン。そんな彼の運命は、世俗の欲にまみれた牧師、殺人鬼カップル、腐敗した保安官らの思惑と絡み合い、暴力の連鎖へと引きずり込まれていく。

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〈感想〉

※以下ネタバレを含みます※

 まず始めに言っておく。
この映画に出てくる人物は誰も報われないし幸せにならない。主人公のアーヴィンがやっと最後にわずかな希望を見出せたかな、というところで映画は終了する。原作が小説なだけあって第三者視点のナレーションを中心に進行していくのだが、これがまた絶妙に良い味を出している。セリフで登場人物に説明させがちな邦画とはえらい違いだ。

 序盤の主人公はアーヴィンの父親。ペニーワイズ役で有名なビル・スカルスガイドが演じる。やっぱりこの俳優さんは狂気的な演技がとても上手い。帰還兵である彼はとても信心深い一方で、カッとなりやすく暴力的な一面を持つ。妻が末期癌であることが判明し、飼い犬を生贄に捧げてまで妻を救ってもらおうとするが願い叶わず。おおイッヌよ…。幼いアーヴィンを残し妻の後を追って自殺してしまう。ちなみに妻役はスワロウで主演を務めたヘイリー・ベネット。相変わらず麗しい。

 その後はトム・ホランド演じるアーヴィン青年が主人公となる。かつて父親に教えられたように「やられたらやり返す」を徹底しており暴力も厭わない。しかし父親の一件から神の信仰には懐疑的だ。内気で虐められがちな義妹のレノーラを大切にしている。
 
 ハリポタシリーズのダドリー役とセドリック・ディゴリー役の俳優さんが出てくる(雑)。セドリックはロリコンヤリ○ンくそ牧師役であり、こいつがまぁとにかくウザい。アーヴィンの義妹である敬虔なレノーラを犯したことはもちろんだが、アーヴィンの祖母の手料理を「貧乏人の料理」と言って大勢の前でけなしたこと。ほんとにこのfuc…最大限の厳しい言葉で非難したい。

 「死を感じる時に唯一神を感じる」という理由で被害者が命乞いする姿を撮影する変態おじさんカール。嫌々ながら付き合う妻サンディ。二人はレノーラの父親を殺害してしまう。途中から自分のしていることに葛藤し始めるサンディ。彼女は
助かってほしかったなぁと思う。

 さまざまな伏線が見事に(最悪な形で)絡み合い、後半はアーヴィンによる復讐&逃亡劇へと変わっていく。殺伐とした雰囲気の中でも、もう二度と会えないかもしれない祖母への想いを滲ませたり、幼い時に目の前で殺された愛犬の骨を埋葬するなど、アーヴィンの優しさが垣間見える。恐ろしい運命に虎視眈々と立ち向かうトム・ホランドのシリアスな演技も最高だ。

 妻を失うことを何よりも恐れたアーヴィンの父親、牧師を信じて心身を許してしまったレノーラ、神を感じるからという理由で殺人を続けたカール。そして神を信じないアーヴィン。色々な形の信仰を通して人々の運命は交錯する。ただ幸せになりたいと願う人々を嘲笑うかのように、悪魔は音もなく忍び寄り彼らの人生を狂わせていく。

 宗教や信仰心に対する皮肉が込められた今作。たとえ特定の宗教を信仰していなくても、物事がうまくいくように神に祈ったことのある人は多いだろう。果たして結果はどうだっただろうかーこの映画は人生がいかに思い通りにならないものかを教えてくれる作品でもある。観終われば胃もたれすること間違いなしだが、テンポよく進むストーリーと実力派俳優たちの演技であっという間の138分。Netflixユーザーの方はぜひご鑑賞ください。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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