仕組みがよくても現場が機能しなければ意味はありませんよね？ 「ITIL®」資格体系図探訪【MP編】
2023年9月、米国系ITアドバイザリー企業であるガートナージャパンから興味深い調査結果が発表されました。
発表内容は、日本国内の従業員500名以上の組織を対象に同年4月に実施した調査の結果をまとめたもの。この調査によりIT運用に携わる過半数の人が、自身のキャリアパスに何らかの不安や不満を抱えていることが明らかになったというのです。
※調査の出所はこちら
調査ではその理由も聞いていました。そこでは「新しい技術に触れる機会がない」「他のIT部門のメンバーと比べて昇給・昇進が遅い」「重責であるにもかかわらず、待遇が悪い／評価されない」ことを理由に挙げる回答が上位を占めていたのです。
本noteでは再三にわたり、日本企業におけるデジタル化やDX推進の遅れを指摘してきました。
この調査結果は、そんな危機的状況を如実に物語っていると感じます。
日本企業の多くは、これまでの失われた30年の間に山積したレガシーシステムの技術的負債を返済するために、ITシステムのモダナイゼーションを行っている真っ最中です。
しかし、まだモダナイゼーションが完了していないため、モダンなITシステム稼働前においてはIT運用担当者が「新しい技術に触れる機会がない」と感じているのは、当たり前のことでしょう。
ただし、モダンITシステム稼働前からコンテナや、それを管理するためのオーケストレーションにオブザーバビリティといった管理ツールを含む、新たなオペレーションを検討する必要はあります。そのため、率先して新興技術の採用を開始し、新しい運用管理の仕組みを設計すべきです。
組織は、モダンITシステムの設計だけでなく新たな運用管理の再設計をすべき時にあると言えるのではないでしょうか。
ITSMのモダナイズを現場から支える人材になるために
さて、今回は以下の記事に引き続き、「ITIL® 4」の資格体系について説明していきましょう。
「ITIL® ストラテジックリーダー（SL）」はビジネスを所管する役職者向けの認定資格でした。それに比べると今回紹介する「ITIL® マネージングプロフェッショナル（MP）」は現場に近い担当者向けのものだといえます。
この認定資格は「ITIL® 4 ファンデーション」取得後に、次に挙げる4つの認定研修を受講し、最後の認定試験に合格すると取得することが可能です。
「CDS（Create、Deliver and Support：作成・提供およびサポート）」
「DSV（Drive Stakeholder Value：利害関係者の価値を主導）」
「HVIT（High Velocity IT：ハイベロシティIT）」
「DPI（Direct、Plan and Improve：方向付け、計画および改善）」
このうち上の3つは、ITSMをモダナイズするために現場で求められる知識を得るための認定研修。「CDS」では、バリューストリームベースへのシフトに必要な知識とノウハウを、「DSV」ではカスタマージャーニーベースへのシフトに必要な知識とノウハウを、「HVIT」では、ITサービスの提供や改善を迅速に行うことを意味する「ハイベロシティIT」へのシフトに必要な知識とノウハウをそれぞれ学びます。
※各用語の解説記事はこちら
「DPI」は、「ITIL® ストラテジックリーダー（SL）」を取得するためにも必要な認定研修でしたが、ここではITSMを効率的に運営管理するための組織を構築するノウハウの取得を目指します。言い換えれば、全体最適を実現するマネジメントシステムへのシフトに必要な知識とノウハウを身につけていくのです。
いくら組織のリーダーが素晴らしい仕組みをつくっても、それをきちんと運用できなければ取り組みは頓挫しかねません。以上4つの認定研修の内容は、デジタル時代に求められるITSMを実践するためには欠かせないものばかりです。
つまり「ITIL® マネージングプロフェッショナル（MP）」とは、「デジタル時代にITを活用したサービスを成功に導くために欠かせない人材」であることを証明するものなのです。
※「CDS」「DSV」「HVIT」の内容については「『ITIL® 4』を学ぶなら、何からはじめるべき？」で、「DPI」の内容については「DXを成功に導く、いまの時代のリーダーに求められるものは？」でも詳細を紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
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