「ePlugOne」的ワード解説(4)「サービスバリュー・チェーン」
デジタル化やDXを適切に進めるための前提となる「ITサービスマネジメント(ITSM)」。その本質をよりよく理解するために、毎回1つのワードを取り上げ、「ePlugOne」的視点で解説する記事です。今回のテーマは「サービスバリュー・チェーン」。
※そもそも「ePlugOne」とは……という方はこちらもお読みください!
想像してみてください。
あなたはサービスプロバイダとして、これから事業を始めようとしています。
提供するサービスの内容は何でも構いません。あなたがこれまで培ってきた経験や知見が活かせるものでOKです。
どのようなサービスを提供するにせよ、事業の成功は、いかに適切な価値を顧客に届けられるかにかかっています。では、それを実現するにはどうすればよいのか?
答えを一から導き出すのは、きっと簡単なことではないでしょう。
そんな時に役立つのが「サービスバリュー・チェーン」。簡単に説明すると、次のようになります。
鎖のように絡み合う6つの価値創造活動
サービスを提供する活動は、当然、サービスプロバイダが持つリソースやスキル、サービスの性質によって異なります。しかしサービスをつくったり、提供したりして、価値を実現するために必要な活動は、ある程度共通したものになります。
この共通の活動を、「ITIL® 4」では「計画」「改善」「エンゲージ」「設計および移行」「取得/構築」「提供およびサポート」の6つに分類しています。
1.計画:サービスのビジョンや方針や計画を策定し、組織全体に伝える。
2.改善:利害関係者からのフィードバックや測定したデータをベースに継続的なサービスの改善を行う活動。
3.エンゲージ:顧客を含めたステークホルダーとのコミュニケーションを行い、関係性を維持する活動。
4.設計および移行:サービスの設計とそれを適切に顧客に届けるための活動。
5.取得/構築:サービスに必要なリソースを取得する活動。
※パートナーやサプライヤーからサービスや製品を調達するだけでなく、自組織内でサービスを構築する活動も含む
6.提供およびサポート:サービスを合意した仕様で顧客が利用できるようにするための活動。
※保守運用などの活動を含む
「サービスバリュー・チェーン」とは、これら6つの活動の集まりのこと。つまり、サービスの効果的・効率的な管理を実現したいなら、サービスプロバイダが価値を実現する際に鎖(=チェーン)のように絡み合うこれらの活動がどのように価値を付加し、どこに強みや弱みがあり、どこを改善すべきかを分析すればよいのです。
「サービスバリュー・チェーン」は、米国の経済学者マイケルポーターが提唱した「バリューチェーン(価値連鎖)」という概念が元になっています。これまで「バリュ-チェーン」の考え方は、主に製造業などの戦略管理に活用されてきましたが、「ITIL® 4」では、これをITSMに応用したというわけです。