たった73ページ未満の夢
バイト終わり
自室の地べたであぐらをかき
左膝を立てながら
右手で冷やし中華をすすり
左手でページをめくる
真横に置いた扇風機がページをめくれと急かす
だんだん右手が機能しなくなる
食べ尽くすよりも先に読み尽くして
扇風機に向かって叫んだ
叫んだら急に窓から甲子園が聴こえた
下の階のテレビは相当音がデカい
今、点けたわけではないはずだ
夢中で読んでいたから音を遮断していた
山へ登ると耳が上手く聞こえなくなる
それは何かを飲み込むことで大抵治る
私にとっては同じことだ
叫ぶことで治る
叫ぶことで私の耳が元に戻る
そしてそのことが私を現実に帰す
現実に帰ってもなお、興奮冷めやらぬまま
ぬるくなった麺をすすった
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