ピンクの歯ブラシ、シルバーのイヤカフ
2度目に会ったとき
もう良いかな。
なんて思っていたのに相手の家に
イヤーカフを忘れた自分を心から恨んだ。
家に忘れ物をするなんて
また会いたい。
と言ってるようなものだ。
最悪。そんなつもりは微塵もない。
あ、ごめん、ほんとにわざとじゃないんだけどさ、イヤーカフ忘れちゃったみたい、、、
机の上に置いたかも、
イヤーカフ?ちょっと待って、
あーこれかな?あるよ。
次いつ来る?
んー、わかった。また連絡する。
通話時間41秒
色気も愛もない電話
何度も約束して、何度もそれを破った。
繰り返しているうちに結局
「次」は2ヶ月後になった。
彼の部屋はいつもより綺麗に片付いていた。
「きれいにしてるんですね」
先日読んだ小説にあった
弱い女性のセリフを思い出して
気持ちごと真似て口にしてみる。
彼は「嫌味?」と言って笑った。
夕方に新しいマットレスが届いた。
10万もするマットレス。
昇給した自分へのご褒美として買ったらしい。
彼よりも先に私が寝転んだ。
彼のことよりもこのマットレスの方が好きだ。
と思った。
その夜も映画を観て過ごすことにした。
会わないうちに彼のマイリストの顔ぶれは
だいぶ変わっていた。
その中から迷いに迷って
シャッターアイランドを選んだけれど、
私に続いて彼も眠気に勝てず
再生してからものの15分弱で
すでに電気を消してあった部屋から
完全に灯りが消えた。
だいぶ序盤でのリタイア。過去最高記録
彼は決して、映画を、
女と寝るときの余興として扱わなかった。
2人でただただそのマットレスを味わった。
やっぱりマットレスより好きかもしれない。
いや、さすがにそれはないか。
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