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ひとつ残らず、ぜんぶ愛

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#恋

ひとつ残らず、ぜんぶ愛 /1

ひとつ残らず、ぜんぶ愛 /1

どこが好き?わたしのどこが好き?

なんて聞かなくても分かる

彼はわたしの眉をよく撫でる

眉の緩やかな曲線を優しくなぞったあとは

決まって優しくキスをする

彼はよくわたしの眉に見惚れていて

わたしはそんな彼の視線に熱くなる

この熱は、照れからじゃなく

きっと嫉妬に似たものから出来ている

わたしはわたしの眉にさえ嫉妬している

それがおかしいことは分かっている

わたしの眉はわたしの

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ひとつ残らず、ぜんぶ愛 /2

ひとつ残らず、ぜんぶ愛 /2

覗き込んで5秒くらい経ってからやっと彼が喋った

「寝れた?」

まだ半分しか開いていない目で

空のほうを向いていた彼が

こちらに視線を向ける 顔が近い

「うーん、割と寝れました」

と応えながら今度は私が空の方を向いてみる

「そう。良かった」

と言って彼もふたたび空を眺める

あーほんと、名前なんだっけ

「寝れましたか?」

「割とどこでも寝れるタイプだから寝れたよ」

「良かった」

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ひとつ残らず、ぜんぶ愛/7

ひとつ残らず、ぜんぶ愛/7

上着を羽織って
スマホと財布だけをポッケに突っ込み家を出る

日曜日、しかも天気が良いのにも関わらず
近所の古本屋に行く途中にある公園には
人ひとりいなかった。

公園が寂しそうに思えて、
自販機で暖かいココアを買い
黄色いベンチに腰掛ける。

今日は何にしようかな

古本屋の外に置かれた棚の中で
文庫本が窮屈そうにしているところを
思い浮かべる

クリーム色の外壁には
1冊100円
と手書きで書

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