Final Dawn (1)
ノイズが空虚に拡散した後、コンピューターの声が聞こえた。「こちらが最後の夜明けです。ごゆっくりお楽しみください。」そう案内員が言うと部屋の灯が消えていくのに気づかず皆が黙り込んで日の出を眺めた。
先月から続く「スペースシャトル一週間宇宙の旅」は三週間前まで順調だった。セレブリティは人ができており、彼らの揃う宇宙空間では些細な揉め事があったにせよ船内はいつも平和だった。触れると冷たい合金は三角形を基調にしており、堅牢なフレームは僕たちが真っ黒な宇宙空間に追放されることを決して許さない。しかし完璧な空間に、黒く重い鉛が宇宙空間ですぅと浮かんで、触れることも掴むことも許されない大きな問題が旅行者の心を最果てへ拐かした。
旅行最終日、旅客を載せたシャトルは大気圏突入のため地上本部からの無線案内を待っていた。しかし予定の時刻になっても応答はなく、地上とのスケジュール管理の連携がうまく取れていないと判断した機長は着陸予定時刻を数時間後に回した。そうしてグラスを傾けながら宇宙旅行の思い出にふけってるところで窓際の女が慌て始めた。「どうもおかしく思えるわ、見てほしいのよ。なんだか色が変ではなくて。」徐々に騒ぎが大きくなり、やがて聞こえる音のほぼ全てが集団の声の締めるところになった時、私はゆっくり跳び、足を浮かせて必要のない背伸びをした。人混みを縫うように船窓から目を覗かせると、すぐに大きな星が真っ赤に染まっていることに気がついた。
「赤い。赤いわよ。」女が言った。僕もそう思う。もっとも、暗所に目をやり続けていたため星はひどく眩しく、すぐに目を閉じて瞼の裏に残った残影を追いかけていた自分には何が起こっているのかいまいち分からなかった。騒ぐ人の声をよく聞くと状況は良くないらしい。どうやら地球は燃えて終わってしまったようだ。