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Final Dawn (3)

 とうとう船内に残る生存者はまったく生きることを辞めてしまった。科学技術の進歩が生んだ正確なデータ管理が人々の心を毎刻叩き潰しに来るからだ。やはり、道徳の重要性を意識する。優しく有ることとは賢く有ることよりもうんと難しいことなのだ。掲示板の一枚は起動時と変わらない明るさで、今は資源のほぼ尽きたことを伝えてくる。

 日の出を眺めた後、何もできずに居た僕たちに声がかかる。「お知らせします。当機の終わりが近づいたため、特別に空をもっと近くでお見せいたします。」機械によるアナウンスが入ると広い中央のスペースで鉄板が外れ、巨大な窓が現れた。窓には半透明の光線フィルタがかかっており、光の波が蠢く外側から目を守る役割があるようだ。緑か灰か判別できないもやのかかった地球が窓から覗く景色の4割を占めている。不安が煽られる中、右上に浮かぶ男が言う。「終わりとは何なのだ、私は終わりたくないぞ。食料はバーにだって倉庫にだってまだ大量だ。一体全体何が終わりだ、日の出もそうだ、不吉で。我々を呼び出して、失礼だぞ。」その言葉に頷く皆の体がぷかぷか揺れるのを見ていた。機長がシワの深い真顔で「酸素がない。」というと、皆は頷く代わりに軽い痙攣を始めた。

 「すぐに窓は開きますから、どうぞまともにお待ち下さい。」そう言って機長はぷっぷかと姿を消した。慌てて鼻をつまんで、さらに不安で目を閉じた。静かな空間へ捧げるように、止まらない心臓が等間隔でリズムを投げ捨てていた。しばらくして少し空気が揺れると、瞼の上から貫通して強い光を感じ、暑くて熱くてたまらない僕は我慢できずめいっぱい呼吸をして目を開けようとした。どうも全てが空回りしているので、もう宇宙に出てしまったのだと理解した。死ぬ前にと、ただ半目で見たどこかの星は球体ではなくまるで水彩画のような、境界の滲んだ紡錘形に見えた。檸檬を想起させるその光景はすぐに真っ赤で真っ白になった。

---Final Dawn 終---

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