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ルビーの指輪と祖母たちの好み

いつか私が死ぬときに、私が集めたものたちが誰かの元へ行けるようにという祈りの代わりの記録。

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昔の日本は比べると豊かで、正確にいうと貧しいところから豊かにした時期があって、そのせいか祖母たちは沢山の宝飾品を持っていた。

不思議なことに示し合わせたわけでもなく、両方の祖母からルビーの指輪譲ってもらった。私には妹がいて、いとこもそれなりにいる。片方の祖母は私と妹に平等になるように好きなものを選ばせる。もう片方の祖母は娘と孫にそれぞれイメージに合うものを渡したことがあった。

それぞれの祖母からルビーをもらったのはラッキーな偶然だった。というのも二人の性格や趣味が異なるように、指輪もまるっきり違うデザインだからだった。

母方の祖母の指輪はゴールドとプラチナが寄木細工のように組み合わされた土台に、ルビーとダイヤが交互に堀り留めされたもの。一見シンプルで、よく見ればこだわりが伝わってくるデザインだ。指輪の通りこちらの祖母はシックな装いが好きで、素材や隠れたこだわりに重きを置くスタイルだった。今だったらクワイエットラグジュアリーを好む気がする。

父方の祖母の指輪は親指より大きいドーム状の花のモチーフで、花びらには大きさの違う真珠を2周、おしべにゴールドとめしべに小さなルビーを使っている。おもちゃと思ってしまうほどのボリュームは歳を取れば取るほど似合うようになりそう。祖父から貰ったお気に入りらしく、指輪の部分が少しひしゃげていた。こちらの祖母も指輪の通りで、伊太利というブランドの豹の柄(豹柄ではなく)のセットアップをはじめ、とにかく華やかで豪快なスタイルだった。

譲り受けたものというのはそれだけで特別。もっと特別なのは横並びにした二つの指輪を見るたびに、二人の正反対の祖母の雰囲気を思い出せること。外見ばかりりにうつつを抜かすなというのは間違ってはいなけれど、やっぱり中身は外見に滲み出てくるものだと思う。

一般的な持ち物で貴金属ほど長い時を超えられるものはあるだろうか。リメイクは大好きだけれど、できればこの指輪たちがこの姿のまま、私の寿命の数倍の時間を色々な持ち主と過ごして欲しいと思わずにはいられない。

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