第13回 (11月20日)の授業へのフィードバックから

第13回の授業へのフィードバックからご紹介します。

まずはこれまで勉強してきた認知主義の限界について議論しました。

  • 航空機の入力で、三次元、四次元の微分の入力があるという話がありましたが、あまりイメージがつかなかったので、具体例を聞きたいです。

私も飛行機の操縦はできないので、具体的なイメージで伝えることはできないです…

次に、認知主義では説明しきれない人間の特性の話題として、いわゆる「非認知主義」について簡単な紹介をしました。

  • 非認知能力の中で、アビリティとスキルが別なものだと定義されているのが直感と異なり面白いと思った。     

「能力」といった場合は ability ですね。非認知スキル、非認知特性といった言葉もあるようです。

  • 中国語においてcanの意味である「できる」を会、能、可以で書き分ける必要があるということを学びましたが、能力・スキルの区別の仕方と同じだなと感じました。

なるほど!

  • 実験楽しかった

  • 心理テストが楽しかったです

  • 今回はパーソナリティの測定方法を模擬的に体験することができた。

  • 心理テストにより自分の誠実性に対する認識と乖離があったことに驚いた。

  • 心理テスト久しぶりでドキドキした

今回は、非認知能力の一つとして挙げられることが多い Big Five の誠実性、そして他の4因子について、模擬的に測定しました。測定結果は回収せず、各自で採点して自分のスコアを確認しました。スコアもさることながら、実際の測定のプロセスの体験に興味を持ってくれた人も多かったようです。

  • 実際の実験のような雰囲気で実験ができて新鮮な体験だった。

  • 実際に被験者の立場を体験してみたら意外と怖い気持ちになった

  • 匿名調査でもちゃんと署名が必要なことに驚きました。

  • 今日の質問紙と同じようなことを小学校のときにやったなと思った

  • • 授業中の実験は前回の授業の説明であったところを忠実にやってくれたおかげで実際の実験での様子が分かった。

  • 実際の心理学実験における手順や、進め方を体験的に学ぶことができた。

  • 今回の心理学実験の演習では、事前に同意書を書くなど、本格的で勉強になった。

また、前回「心理学実験」の典型的な手順についても勉強しましたので、せっかくなので、模擬的に「参加者への説明」「参加同意書への署名」といった手順も経験してもらいました。
コンセントでは、情報(データ)の提供の承諾だけでなく、「これからこんなことをしますけど良いですね?」という内容の承諾も重要なポイントです。

  • 誠実性だけ非認知だというのが面白かった。良い悪いがはっきりしている項目ももっとやってみたいと思った。

今日使った小塩先生の教科書では、何らかの活動(たとえば仕事)に正に貢献するかどうかということをひとつ重視していたと思います。
ただ、本来パーソナリティは人間の性格の個人差を説明するための変数だと思っていますので、かならずしも 「良い悪い」でくくれるものではないと思っています。

  • 最近では、性格診断としてMBTI診断というものがポピュラーであると思っていたが、他にもOSEANという分類方もあるんだなと思った。      いずれにしても、その型fが同じでも、性格が同じになるわけでもないと思うので、マーケティングなどには使えないのかなと考えた。

  • Mbti診断も心理学を利用したものなのかなと感じた。今回やった実験とどちらが優れているのか知りたいと思った。

  • 自分のBIG FIVEを測定する実習が面白かったです。最近ではMBTIというBig fiveに似た特性を判定するものが流行っていますが、それよりも簡単で驚きました。

  • 今回の講義ではビックファイブ・パーソナリティーを測る演習を行った。数値として自分の特性が表れていて面白いと思った。似たような性格診断で最近mbti診断というものが流行っているが、みんな自分の性格を知りたい傾向にあるのかなと思った。

  • 性格診断などは好きなのでたまにやるのですが、大体いつも合ってるような気がするのですが、そう感じるだけなのかなともよく思います。

  • 性格診断というものは本日の実験以外でも今まで何度かする機会があったが、認知能力の特徴について考えながら本日の授業の実験に臨むことができました。

  • 今日の授業では認知主義で人間の何がわかるのかというテーマでした。ビッグファイブ理論の実験をして、自分の性格を診断できて面白かった。MBTI診断の簡易的なものと似ている気がしました。

Myers–Briggs Type Indicator (MBTI)ですね。もともとユングが原型をつくり、1960年代に Briggs と Myers が最初のバージョンを完成させたとされています。ただ、科学的な心理測定の尺度としてはこれまでいくつかの批判がされていて、現在では科学としての心理学ではほとんど使われていないと思います。一方「わかりやすい」ので、就職やコンサルティングなど、ビジネスの場面ではよく名前を聞きますね。

  • 感情を測るということは非常に難しいと思っていますが、本講義で一考の価値はあるのかなと感じました。また質問なのですが、バイトの募集テストで人格テスト?のようなものを受けました。このようなテストにも心理学は利用されていたりするのでしょうか?

えーと、まず今回扱った中に「感情」は含まれていません。その意味で「感情」の講義をする前に「感情知能」の話をしたのは失敗だったかな?と思いました。
また、その「人格テスト」の内容にもよりますが、たとえば MBTI だったら、上記のようにもともと心理学者たちが作ったものですが、現在では科学としての心理尺度としてはほとんど使われていないものもあると思います。
心理学の科学的なパーソナリティ測定の尺度としては、やはり Big Five が主流だと思います。

  • 感情や性格は、どこから生まれたのかわからない、とても不思議な概念だと思う。自分は内向的で楽観的な性格なので、将来の職場の環境などでこの性格が変わるかどうか決まるのだろうと思った。大学生は、学力に関わらず、遅刻したり欠席する人が多いので誠実性が低いと思った。

パーソナリティは、もともと人一人一人の言動の傾向の個人差を説明するための概念であったと理解しています。
一方感情は、次回お話ししますが、特に基本感情は生物としての人間に古くから備わった機能であると考えられています。

  • パーソナリティについて五つの因子で表されるということを学んだ。さらに、もしかしたら一つの因子で表され得るかもしれないということを学んだ。しかし、自分のパーソナリティが一つの因子で表されてしまうのは、なんだか悲しいなと思いました。

そうですね。ただ Big Five (5因子モデル)は包括的と言われていますが、それでも人間の性格を高々5次元空間で完全に表現できるのか、という疑問があります。

  • 5項目のうち例えば調和性の点数が低いからといってそれが一概に悪いというわけではないとおっしゃられていましたが、項目ごとの組み合わせによってはそれがそれ話よくないこととなってしまうように感じ、5因子が相互に相関し合っている事に納得しました。

そうですね。相関がみられるという研究があったと思います。

  • 巷では社交性がとにかく大事だと言われていますが、内向的な性格でも活躍している人が沢山いると聞いて少し安心しました。

  • 内向的な人は芸術家、クリエイターとして活躍する要因として、こだわりの強さが個人的には生かされていると感じますが、こだわりの強さを可視化するのに必要な情報や実験等は先生はどのようなものがあると思いますか?

むずかしいですね。こだわりは「価値観」(value, value system) に関係するような気がしますので、価値観の尺度などが有望かな?ちなみに内向性について興味があれば、スーザン・ケイン (Susan Cain) の「内向型人間の時代」(原題:”Quiet”) を是非読んでください。 また、Cain の TED Talk もおすすめです。https://amzn.asia/d/6AZ6PYa
https://youtu.be/c0KYU2j0TM4?si=87eRDhx9K3TWqxGE

  • シンプルな30個の問いで性格の性質を分類できることに驚いた。特に自分は開放性が顕著に低く人との協調性を重んじる調和性が高くなっていた。

パーソナリティ尺度は、分類することが目的ではありません。人の言動の傾向(程度)を説明することが目的です。Big Five で言えば、5次元空間のどこかに位置する、という意味です。

•誠実性関連は、受験勉強や課題の提出などはできても、部屋の片づけや家事などは、いい加減であったり、ルーズであったりすることを念頭に回答しました。

そうですね。一般的には「やらなくてはならないタスクなどをいかに実施するか」といった文脈ですで、その意味「部屋の片付け」なども入るかもしれません。

  • 確かに5つの要素の相関は高そうだと思った。誠実性が高ければ、パフォーマンスが上がって、自己肯定感が高まるので、他の要素も値が上がりそう。

自己肯定感はおそらくパーソナリティではなくてその人のその時の状態を表す state ではないかと思います。そして、自己肯定感がパーソナリティに影響するかどうか?はどうなんだろう。そんなに簡単な問題ではないと思うけど、研究はなされているのかな?

  • ビッグファイブの実験では、数値が極端に高かったり低かったり出てしまったので自分がどういうタイプであるか分かりやすかったです。この実験において数値が0付近ばっかりの人と極端に高低差がある人がいると思いますが、これも心理学で説明できるのか疑問に思いました。

その差を心理学で説明できる、というよりも、「個人差が存在する」という事実が心理学の見解です。その差は、遺伝など生得的なものや、育った環境などの影響によって生じると考えられます。

  • 私はどうやら誠実性が低いようです、、  今回の心理学実験の回答を回収して分析して欲しかったです。

「分析」しても、「なぜ誠実性が低いか」という理由は見つけることはできません。それは上記のように多様な要因が原因となりうるからです。
私たちの研究室でパーソナリティを測定するとすれば、例えばパーソナリティと技術の受け入れやすさ、など他の変数との関連性を調べたい時ですね。

  • 環境によって、性格が変わっていく話が面白かったです。ビッグファイブの測定を行って、スコアを出して高いとどうなのかなどを聞いて比べるのが面白かったです。

パーソナリティを含む trait は時間的に安定しているのが特徴です。ただ長い時間の経過や環境の変化、人生に大きな影響を与える出来事などで変化するとも言われています。

  • いつも心理系のテストやると平凡に近くなるのは、自分が特出してるという自信の無さの表れですか?

そんなことはないと思いますよ。今回は授業内での演習形式だったので、厳密な測定とは言えませんが、それほど顕著に高い値で出ることの方が稀だと考えて良いと思います。

  • 自分は今回行ったようなアンケートを応えるとき、自分を完全に客観的にとらえることが出来ているのか不安になって遠慮してしまいます。自分を客観的にとらえるにはどうすればいいのでしょうか

  • この実験は自らで自分を評価するので客観的に見た自分と若干相違があるのではないかと感じます。

自分を客観的にみるのは、誰にとっても難しいと思いますよ。それが人間として自然です。

  • 確かに情報処理機能としてのモデル化には限界があると感じていたので、EIはいい指標だと納得しました

  • EI がそんなに重視され始めているとは思いませんでした。確かに、一緒に働きたいかが重視され始めているとは聞いていましたが

  • 海外の企業でエモーションナル・インテリジェンスが重視されていることが多いとのことで、日本とは違うなと思った。

逆に日本の学校 (小学校~大学)では、EIに関する教育をやらなさすぎであるという反省があり、教育分野の方々はそれの改善に動きはじめているようです。

  • EQが高いと大学の成績が高いというのは、周囲に友人が多いため、過去問をもらえる可能性が高まることや、レポートを協力して行うなどのことができることによる結果ではないでしょうか。

そうかもしれませんね。ただ、大学の成績ではなくて職場でのパフォーマンスに置き換えたら、おそらく直感的に納得していただけるでしょう。IQでは測れない、さまざまな情報を取り入れて処理する能力としてEI (俗に言うEQ)が提案されていることをお忘れなく。

  • 非認知能力の授業が来年もし出来たら絶対に出ます。

授業中もお話ししましたが、「非認知能力」単独での授業は、ちょっと実現は難しそうです… 残念ながら。

  • 文系教養科目の「コミュニケーション論B」で心理的安全性について学んだが、チームの構成員に心理的安全性を与えられるリーダーになるには、認知能力だけでなく非認知能力が必要だと思った。

心理的安全性と職場のマネージメントの関係については、私の大学院の科目「感情と人の社会」でも触れます。興味があれば聴きに来てください。

  • 今日の非認知能力に関しては、非常に興味が湧きました。  可能であれば、大学院の授業も取ってみたいと感じました

はい。非認知能力全てについては扱いませんが、例えば情動知能( emotional intelligence)やそれを開発するプログラムなどについてお話しします。

  • 非認知能力は決まったモデルがなく、その影響がよく分かっていないものもあるが、これから研究が行われてより精度の高く洗練された説明ができるようになると思う。

  • 情動知能の考え方は面白かった。非認知能力はいくつか例が挙げられていたがイメージしにくいものが多いと感じた。

今日の授業でも話した通り、非認知能力と呼ばれるものの中にもさまざまなものが含まれます。どの程度解明されているかについても差はありますが、それぞれの分野で研究者が研究を進めていますので、かなり知見は溜まってきていると思います。重要な点は、心理学者は必ず科学的エビデンスに基づいて知見を述べますので、本に書いてあることはこれまでの研究で解明されている事です。興味があったら今日ご紹介した本に目を通して下さい。
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  • 情動知能は重要な指標ではあるが、定義づけや数値化が難しいものであるように感じた。例えば、人を助けるなどの行動によって心が豊かになったり、社会的に評価が少しあがったりなどは効用関数などに反映できるのだろうか。

例に挙げてもらった2点は、情動知能の定義にはあてはまらないとおもいますね。どちらかというと自尊感情 (self-esteem)ではないかと思います。

  • 人生中認知能力と情動知能どっちが重要が大きな課題だと思います。

どちらも重要です!

  • 今回は非認知能力、心理学アンケートの実施、そして感情知数に関してお話をされていました。用語の定義をしっかりと置いておかないと、研究者同士で齟齬が発生しやすい分野だなと直感的に感じました。

この分野に限らず、研究を行うときはいつでも、概念の定義から始めます。理由はあなたの言う通り、あなたの言う「A」という概念と私の言う「A」という概念が異なるものを指していては困るからです。

  • 非認知能力が、本で紹介されているものだけで15個もあることに驚いた。人間の能力というのはもっとも身近なのに、あまり研究が進んでいない印象を感じた。それは、人間に対して研究を行うことが倫理的によろしくないことも関係あるだろう、と考えた

今日の教科書に出ている内容は、研究の上でそれほど倫理面に引っかかるものはないように思います。純粋に、これまであまり注目されてこなかった、と言うことではないかと感じています。

  • 今日までの授業の前提が破壊されてびっくりしました。人間をシステム化して考えすぎない点については本当に共感できました。両方の考え方のいいところをとるべきだとおもいます。

  • IQが高くてもEQが俯瞰できてない人間の存在を常々感じていたので、講義を通じてなんとなく理由づけがされて良かった。

両方が一緒に働くのが、人間です。両方を理解して初めて、人間の営みを理解することだと思います。

次回は最終回。感情の話にちょっと触れて、この授業を閉じます。お楽しみに(といっても授業はもう終わっているのですが…汗)


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