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クレヨンしんちゃんを子供達と一緒に見に行かなかった話と、ワガママなお母さんであることやマイクロアグレッションについて

昨日は小学生の子供たちも私も夏休みだったので一日遊ぼうということになった。クレヨンしんちゃんの映画がみたい!!!という彼らの熱烈な声がある一方で、全く興味がわかない私。(別にしんちゃんが教育に悪いとか面白いとかつまらないとかいう壮大な議論を展開したいのではなくて、ただの好みの問題。私は同じアニメならドラえもんの方が好きなのだ)

「バービーにしようよ!」「あいだを取ってエレメントはどう?」などとカウンターピッチを繰り返したけど、二人は一向になびかない。今回のしんちゃんはすごいのだ、と。

仕方がないので、両立プランを提示した:

  • 上演時間にキッズを渋谷TOHOシネマズの劇場のドアの前まで送り届ける。二人分の映画チケットはもちろん、ドリンクも付けて。

  • 私はそこから映画が終わるまでの94分間、ダッシュで渋谷サウナスへ向かう。平日午前中のお得プランで入浴。

  • 身支度を整えたら、キッズが映画を見終えて出てくるタイミングに合わせて劇場出口にあるミニオンズの像の前で待ち合わせ。

というお互いやりたいことをするハッピープラン、子供達は快く受け入れてくれたので昨日実行してきた。たかが94分なんだから興味のない映画でもみたらいいじゃないかお母さんなんだから、とかアメリカだったら犯罪だよ、といった声が頭の中で何回も聞こえただけど昨日はどうしても興味がわかなかったし(ファンの方ごめんなさい)、先日家族時間を過ごしたくて着いて行ったインディ・ジョーンズで悲しい思いをしたので直近で同じエラーを2回繰り返したくなかったというのが本音。あとで「あんまりだったわあ」とブツブツ言う母よりサウナでさっぱりした母ちゃんの方が望ましいであろう、とも。

「ママの知り合いを自称する人が現れても着いていかないんだよ」と誘拐防止の約束をし、高学年であるお兄ちゃんに私の携帯の番号を書いた紙も渡して(万が一必要があれば近くにいる大人に頼んで電話をかけたらいい)劇場に入る子供達を見送りながら、たくさんの家族連れが吸い込まれていくのを見る。どの親も私みたいに子供達を置いて外にいく気配はない。そうか、私はなかなかワガママなのだなとふと思う。いや、もしかしたら周囲からしたらこんな夏休みの出来事を待つまでもなく火を見るより明らかな事実なのかもしれないけど。

もう何年も前、子供たちがもっと小さくて手間がかかった頃。近所のママ友に「ワカメさん、風当たり強いよぉ。本当に、家のこと何にもやらないねってみんな言ってるよ。」と言われたことがある。当時の私は、新しい仕事を始めたばかりで一生懸命だったこともあり、義理の母やベビーシッターや家事ヘルパーさんなど、かなり強力な助っ人を複数依頼してチーム体制で毎日の生活を回していた。といっても無限にお金があるわけでもないから、住み込みのお手伝いさんなんて雇えない。毎日2時間ずつ誰かに育児家事を助けてもらったり、洗濯物は近所のランドリーでやってもらったりといった感じで、それでも家の中の家事は溢れていた。未就学児童が二人家の中にいると言うことは、常に誰かが何かをこぼしたり倒したりばら撒いたり発熱したり漏らしたりしているということなのだ。1日2時間のヘルプがあっても家がモデルルームみたいに綺麗になったりはしないし、お母さんがモデル体型になったりもしない。

夫は非常に子煩悩なのと当時は仕事の拘束時間も短かったので、シッターさん以外で保育園の送迎や公園に連れて行くのは主に彼。私は家事炊事や、契約や支払い、書類ものや補助金の申請や買い物などを担当していた。全体で言うと分担比率は半々に近かったと思う。

その状況について、当事者である夫や子供達から文句が出たのだとしたらもちろんわかるのだけど、ほとんど関わることのない近所のママ友が、なぜ私の家事労働ぶりについて苦言を呈し、さらにその周囲からの評判まで伝えてくるのかはよくわからなかった。今思えばワンオペを強いられていた彼女なりの苦し紛れの嫉妬表現とテロ活動だったんだろうけど、私は私で必死で頑張っていた時期だっただけに、悲しかった。人はなぜ社会的強者だと認めると何でも言っていいと思うのだろう。疲れていたのもあって、家に帰ってから泣いた。

そういえばこのママ友は数年後、夫の赴任について海外移住したのだけど、ある日海の向こうから「ワカメさんに会えなくて寂しい」と絵文字付きのLINEを送ってきて、狂気を感じた。

子どもたちが小学校にあがった後も、久々に子供の授業参観に行くとまた別のママ友に「珍獣、現る!」と言われたり(これは彼女なりの冗談だったのはよくわかるけど、別にレアキャラだからって珍獣って呼ばれる必要はない)。入学式に参加したら「うわ!いる!」と言われたりした。もしこれが会社での出来事だったら、「それはマイクロアグレッション、無意識の差別ですね。」「私が母親ではなく、父親だったとしても同じコメントします?」と尋ねるべき場面。でも色々な前提を共有できていないとそんな会話は成立しないので、うっすらとした微笑みを浮かべて聞こえないふりをして過ごした。

ところで、私は人が大勢いる場所に行くと軽いパニックを起こしてその後寝込んでしまう傾向にあるので、整然と行われる入学式や卒業式ならまだしも、運動会やスポーツの試合、熱狂するタイプのコンサートなどが苦手だ。心理カウンセラーの人に相談したら「軽度のアゴラフォビア(広場恐怖症)かもね」とのことで、もし混乱してきたら素数を1から順番に数えるとか(1、3、5、7、11、13、17、、)999から奇数を少ない数の方向に数える(999、997、995、993、、)など意識をコントロールするコツを教えてくれてこれは助かっている。子供の運動会はこれまで大体参加してきてるけど、途中で気持ち悪くなってしまうので中抜けすることが多い。夫はよくわかっていて「先帰って寝てなよ」と言ってくれるし、それで私は家で少し休んでから焼きそばを作っておいたりするのだけど、何も知らない人が見たら「子どもの運動会も飽きて途中で離脱するワガママなお母さん」に見えることもあるのだろうう。人がどう捉えるかなんて、コントロールできない。

ママ友に怠惰なワガママ女扱いされたのは悲しかったのだけど、話を戻すと、クレヨンしんちゃんを一緒に見ない私は確かにある程度はワガママだな、とも思って数年越しに少しだけ腹落ちした

でもまあ、開き直るようでアレなんですが、当事者がそれで納得がいってて成立しているのであれば(この場合は子供達と私)、やっぱり色々な人がいていいと思う。昨日もランチで合流したときは三人とも幸せいっぱいで、午後も卓球やゲームをして楽しく遊んだし。子供達も大人になったら、外野の声を気にしないで選べる自由の民になったらよろしいと思うので、今からお母ちゃんはその背中を見せておこう、とこじつけてみる。もしかして、クレヨンしんちゃん、面白かったんじゃないかなんて思いながら。



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