父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
最近、親が子供に教える系、○○歳から始める○○学みたいなのを読みがちなすしおです。ということで今日はこちらの本を紹介します。2019年に発売されたこの本。
娘に教えると書いてあるので対象年齢割りかし低いのかなと思いましたが全然そんなことはない。小学生とか中学生のお子さんに教えたろと思って安易に買うと挫折するかもしれません。というのも内容が濃ゆい。一方で、これぞ経済学!公式バチバチ!みたいな形式ばった内容でなく、著者のバルファキスが語りかけてくるような構成でとても読みやすい。バルファキスはギリシャの経済学者でアテネ、オーストラリア、ケンブリッジ等で大学講師を務めたことがある。2006年のアメリカ金融危機がギリシャに影響を及ぼしますよとか、2010年前後に起きたギリシャ危機を事前に指摘した人。いわば経済学のプロフェッショナルです。
以下、本書で個人的に刺さった箇所を抜粋します。
・○○が生まれたがために国家、文字、通貨、債務、軍隊、宗教といったものが誕生した。
・市場社会は格差を生み出す。一握りの富裕層に富が集中し、その傍ら貧困にあえぐ人が多い。
・交換価値と経験価値
・労働市場は労働力の交換価値だけで動くものではない。経済全体の先行きに対する楽観と悲観に左右されるのだ。
この中でも特に刺さった上から2つを簡単に説明します。
まず一番上。〇〇何が入るでしょうか。
答えは「余剰」です。ここでいう余剰とは、有り余るほど多い農作物のことを言います。はるか大昔、人々は狩猟と農耕により食料を獲得していました。地域によっては狩猟に適した地域があったり、農耕に適した地域がありました。そうすると食料を沢山蓄えられる地域とそうでない地域が生まれます。言い換えれば余剰を持つ地域とそうでない地域です。その差が拡大し国が生まれ、それぞれの国を統治するための軍隊、国民を忠誠させるためのルール=宗教、物々交換よりも効率的な通貨が生まれました。
コロナウィルスの影響により立ち行かなくなった新宿区のホストクラブが、行政から力を借りて運営資金の借り入れをしているそうです。もともと地方行政陣営と水商売を生業とするホストクラブ陣営はずっと対立していました。何故、両者は協力し合うようになったのでしょうか。その答えは借金にあります。借金をしたことにより社会的責任感が生じ、永続的な経営を目指すようになったのです。
ここで2番目の市場社会は格差を生み出す。一握りの富裕層に富が集中し、その傍ら貧困にあえぐ人が多いについて説明します。海外の極端な地域程ではないですが、日本人である皆さんも格差を感じることがしばしばあるのではないでしょうか?人生において特に感じやすい場面をいくつか挙げてみます。
・学生時代、友人のAさんは夏休みになると、家族旅行で海外旅行に何度も行ったことがあるらしい。私は夏休みは毎日公園で草野球だったのに。
・大学に通いたいが学費が高く、奨学金を借りなければならない。
・マンションや車など高価な物を購入したいが今の給料でローンが組めるのか心配
などなどお金にまつわる悩みというのは挙げたらキリがなく、その度に少なからず劣等感が生じるのではないでしょうか。そして、お金さえ沢山もっていればなとお金持ちを羨んだことがある方も多いと思います。日本は資本主義社会です。そして、資本主義社会の構造上、お金持ちにお金が集まるようになっています。上の3つの例をもう一方の目線、つまりお金持ちの立場から見てみてください。
・友人のBさんは夏休みは毎日草野球。家庭的にあまり裕福ではなさそうだ。一方で私の家は、夏休みになると色々な国へ行ける。たくさんの経験を両親からさせてもらった。
・私立大学のトップといえば慶應、早稲田。どちらも学費は年間100万円以上、4年間で400万円以上。幸いにも家庭が経済的に裕福であるので、学生ローンを組まずに、入学費を払ってもらった。
・欲しい時に一括でマンション、車を買える。
現代において、お金がなくてもお金持ちと同等の教育や経験が出来るようになりつつあるのは間違いないでしょう。ただ、それにはリスクやアドバンテージがあるのが事実です。上の例において、お金持ちとお金持ちでない家庭に生まれた人の差はなんでしょう。色々な考え方があると思います。自分の手元に資金がない人と手元に100万円ある人では、その資本金を倍額にすることにアドバンテージがあるのはどちらでしょうか。答えは簡単なはずです。
本書では、現代の機械化、ロボット化の波のリスクを指摘しています。そして、それら機械を所有する者が富を量産するとしています。上の例と通ずる部分があるのではないでしょうか。説明はこんな所で以上です。詳しい内容は是非本を買って読んでみて下さい。
本書を通して著者が言いたいことは、「物事は俯瞰して見ろ。経済も同じだ」ということです。
社会におけるあらゆる仕組みは頭の良い人によって作られております。そして、その仕組みの中ではそれが正しかろうが、正しくなかろうが統制が必要になります。その統制をしくためには信頼が必要であり、そのためにルールがあります。例えば、国内で使われている紙幣。紙幣は全て紙切れですが誰もが大事なものとして扱います。それは国がこのお金には価値がありますよとルールを設定したからです。
生きていれば色々な枠組みの中で生活することになります。国、学校、会社、家族もそうです。これらの枠組みの中でただ従順になるのではなく、そこから思考を離れた場所において考えてみることが大事なんですね。
以上、本紹介の記事でした。今後も面白いなと思った本を沢山紹介していきたいと思います。ありがとうございました。
参考