奥羽越列藩同盟(星亮一、中公新書)
本書は、涙なくしては読めない。
江戸幕府の末期、瓦解といわれた時代の、いわゆる、幕末の事象に触れる時の感情は如何ともし難い。
本書は、奥羽越列藩同盟について深く考察した稀有な書である。
最後の将軍慶喜を初めとする徳川家の人々や、勝海舟、榎本武揚ら幕臣の写真を眺めていると、とても身近な存在に感じて、彼らが、よもや戦で命を落とす、など、想像すらしたく無い。
会津藩の鶴ヶ城の最後は、婦女子も薙刀を手に取り、戦って、奮戦したと言う。
側近の奥方が、八歳の長女と母を連れたが、もはやこれまでと自刃した。
実年齢の記載はないないのだが、娘さんが八歳の女性ともなれば、当時の結婚年齢から類推すると、恐らく20代である。
この辺が例えば、「姫君たちの明治維新」(岩瀬光代、文春新書)にも描かれている。
幕臣たちに去られていく様子も、余りに痛ましい。
「武士」と言う以上は、「武装集団」であり、本来であれば、慶喜や主君を守らねばならない方向で一体にならねばならないのだが、常に幕府上層部に、戦略の不調和が生じていると言う、やるせなさ。
本題の奥羽越列藩同盟にしても、著書が「あとがき」にも書いているのだが、結果的に敗れ去っていくものの姿を追うのは、読者としても、かなり辛い。
この時代を経たからこそ、日清、日露をはじめとした近代戦を乗り切れたと「現代」の視点でみれば分かる。
実に、割り切れない、複雑な感情の残る一冊である。
本稿は一旦ここまでとしたい。
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