見出し画像

スポーツビジネスを理解する

スポーツ産業と他産業との違い

 大雑把に8割方は同じです。残りの2割の違いを生じさせているのは何か?それには「市場構造」と「ステークホルダー」を比較することで理解できます。市場は供給者、商品、顧客、対価、交換、競合という6つの要素から成り立っています。
 最も大きな違いはその中の「商品」です。スポーツの商品(プロダクト)には生産過程に特徴があり、また、スポーツ=「公共性」という要素がある為ステークホルダー(特に顧客)が複雑で多くなります。

商品の生産過程における特異性

まず生産者となるのが「チーム」「リーグ」「大会」「イベント」です。これらが生産する商品が「ゲーム(試合や対戦)」です。ここで注意が必要なのが「リーグ」「大会」「イベント」は生産できるが、チームを生産するわけではないと言うことです。「チーム」や「選手」はゲームという商品の原材料と考えると理解しやすいです。一番間違えやすいのが「選手人件費」です。通常産業と違って「選手人件費」は商品を生産する際の材料費であり仕入れ原価です。ゲームを見なくとも、結果や順位、ダイジェスト映像、またはスタッツなど、それらはゲームの派生商品として考えることが出来ます。そこで商品を生産するのはリーグ、大会、イベントだと考えることが出来ます。

こうした商品を生み出す生産過程を考えるとき、「勝敗があり、チームや個人単独では生産が難しい」という点で、スポーツ産業は特異的です。商品生産が単独では確保できないのはスポーツだけであります。また、「ゲームという商品」の質を上げる為には、「高レベルで実力を拮抗させる」ことが必要になります。したがって、1チーム又は1個人の突出は「ゲームという商品」を生産する「リーグ」「大会」「イベント」ではビジネス的には商品の質を落とすことになりかねません。高いレベルでの拮抗状態を保つためには、チームや個人はゲームでは競合・対戦で相対する立場でありながら、リーグや大会やイベントのビジネスでは協働して共存共栄を図る、ゲームという商品の質を向上させる戦略を持つことが大切です。一方で、連覇を成し遂げている突出したチームや個人にライバルたちが戦略を駆使し打倒を掲げるといった、その構図も見逃せないコンテンツの一つであります。
ゲームという商品は終わるまで結果がわからない不確定要素があるものであり、クオリティコントロールが出来ません。

高いレベルでの拮抗状態を保つことは、リーグ、大会、イベントの興行における生命線であり、戦略の基本です。しかし、個々のチームや個人の努力による結果をあくまでも各々に任せるという主張もあります。その場合は敗れたものは去り、新たな参入を考える必要があり、それに加えて参加する各々が相当な覚悟をもって挑むことで担保されるのではないでしょうか?

また、ゲームという商品をつくるのは、対戦するチームや個人だけでなく、試合を視聴する観客やファンが質を高める役割を担っています。見られていることでパフォーマンスが明らかに向上することがデータで判明しています。

この決定的な違いをしっかり理解、把握しておかないとスポーツビジネスへの無駄な参入障壁を自身で作り出すことになります。課題解決は現状の客観的かつ構造的な把握がスタートになります。

スポーツビジネスは生きがいを創出できるビジネスであり、人々の余暇をどの様に人生に繋げるか?との問いを重視しています。日本のスポーツは発展途上であり、取り組む側には絵で見て、視覚的にわかるイメージを持つことを心掛け、ビジョンを描きながら実行することが大切であります。

いただいたサポートは挑戦するアスリートへの活動支援に使わせて頂きます。