人生ブランコ10月19日「違いの分かる男」
「違いの分かる男」とはどこか、一流の匂いがする。もはや今どきの人は知らぬが昭和生まれ世代なら、ネスカフェゴールとブレンドのキャッチコピーであることは承知だろう。よくよく考えるとインスタントコーヒーのCMで「違いが分かる」というのは随分、大仰なキャッチコピーでもある。でも当時は「やっぱ一流は違いが分かるんかな」と脳みそを動かすことなく、むやみやたらと信じていたものだ。
今のご時世なら「女だって分かるわよ」とかクレームの一つも入ってしまうのか。それはどうかは知らぬが「違いの分かる男」である。
今日の夜、近所の「ちょいおでん」という店が気になり、足を運んだ。がしかし、生憎の満席で仕方なく近くにあったザ・居酒屋って感じの店に入った。この場合のザ・居酒屋とは看板メニューが分かりづらく、総合居酒屋的と言ってもいいかもしれない。で、実際に席に付くと魚を売りにしていることが徐々に分かってきた。メニューを見ても字の大きさも違うし、出てきた一品も肉メニューと比べると明らかに違っていた。
そんな中、追加注文で頼んだのが「厚焼玉子 390円」である。読んで字のごとく「厚焼き玉子」なんだけど、実際に出てきたのは「どこかで仕入れてきた厚焼玉子」である。一口ほおばった瞬間に「ああ、これは電子レンジでチンした厚焼玉子だ」と分かった。分かりやすく言えば回転寿司屋で出てきそうな玉子で自分たちでは焼いてない厚焼き玉子だ。自分たちで焼いてないの「厚焼(き)玉子」というのなら、分かるのだが。悲しい思いもあるが390円ならそりゃそうか、という思いもある。店にケチをつけたいわけじゃない。ただ、自分も「違いの分かる男」になったなと思った次第である。
「厚焼玉子」が自家製かどうか見分けられる男。あんまりかっこ良くはないけど。「厚焼玉子」という表記にうそはない。これが仮に、「自分たちで焼いてない外注の厚焼玉子」というメニュー表記ならどうだろう?やはり、注文しづらいかもしれない。人は余計なことはアピールしないものだ。「仕入れて三日目の刺身盛り」とか。正直に言われても注文しづらくてたまらんな。
あと最近、よくありがちなことなんだけど、「刺身盛り5点盛り!超お得5種以上入ってます!」という表記だ。じゃあ、最初から6点盛りや7点盛りでもいいじゃないかと思うが、そこは5点盛りなのである。5点盛りと書いてるのに6点入ってると、勝手にお得感を感じてる。
これは故事成語の「朝三暮四」の世界じゃないのか。(猿使いの親分、エサの「栃の実」を減らすことに。猿たちに「朝に3つ、夜に4つ与える」と言ったところ、猿は怒り出す。そこで「朝に4つ、夜に3つあたえる」と言ったらサルたちは喜んだ)
本当は6点盛りなのに、5点盛りと表記する。5種以上入ってます。と実はお得でもなんでもないっていうね。どうだろうか、少しは違いの分かる男に近づいただろうか?