全女子救済物語『もっと超越したところへ。』
※ゴリゴリにネタバレしていくので、鑑賞後に読んで共感していただけたら嬉しいです※
根本宗子さん脚本・山岸聖太さん監督作『もっと超越したところへ。』を観てきた。
「お米」を共通点に、前田敦子、趣里、伊藤万理華、黒川芽衣それぞれの物語が始まる。
一度関係を持っただけで突如男を飼うことになってしまった者があれば、ゲイの彼とひとつ屋根の下で共同生活をする者も。一見普通のギャル男と付き合っている者もいて、しまいにはプライドの塊のような常連男をお店で相手する者も…
とにかく、女たちのそばにいるのはロクでもない男たちだ。
ヒモ、思わせぶり、自己中心的、プライド激高…
そんなロクデナシ社会の縮図のような彼と、まともな(ハズの)彼女4組の物語が『もっと超越したところへ。』なのである。
恋愛は、同じ過ちを繰り返す。
彼氏Aで失敗したことは彼氏Bでも失敗するし、
彼女Aでやらかしたことは彼女Bでもやらかす。
ブチ切れ、叫び、泣き、どうしようも取り返しのつかないところまで2人は堕ちてゆく。どちらかがその場を去り、もう戻らない。
こうして男女は別れ、また1人にな………
らないのが本作の"超越"なのである。
ここで追い出した側の女たちは考える。悩みに悩む彼女たちは次第に空間まで超越していき、会話を始める。
「これ明日後悔するやつだ」
「妥協も必要だよね」
「これ以上好きって言ってくれる人が現れるかわかんないし…」
「私にも悪いところはあるし」(といって、各々が彼に対して罪悪感を抱いてるエピソードを言っていく。元彼に月5万はあり得ないだろ!!)
最高に爽快。恋に悩む女たちの連帯シーンだ。
ここからクライマックスにかけて、本当に涙を流し心筋がぱあっとほぐれるような心地よさを感じながら鑑賞したのだが、パンフレットに掲載されている新谷里映さんのコラムが感情の全てを代弁してくれてしまっているので、ここに私の拙いボキャブラリで書けることがない。是非パンフレットを読んで欲しい。
敢えて何かを付け加えるなら、恋は主観だということだ。女たちが空間を超越してまで体現している。友達に話したら止められそうな相手でも、別れない口実がお米持ちのためであっても、彼女にとって彼は隣にいて欲しい相手で、何があっても受容したいと思う特別な相手なのだ。
4組の部屋を仕切ってたセットが剥がれ、大きな一つの空間でみんなで祝祭をあげるシーン。空間の「仕切り」を意識的に立てたり無くしたりする点が非常に演劇的な一方、タイムラプスを効果的に使い映像でしか表現できない手法も使う。演劇×映画が融合したなんとも贅沢なラストだ。
歪んでいても、これはハッピーエンドなんだと証明するに相応しいラストだった。