草食系僧職ピーポー。
先日所用で出かけたとき、時間があったので
コンビニでコーヒーを買って
その近くにあった公園ベンチでホッコリしてたら、
なんと頭上に立派なざくろの実が。
孔雀明王や訶梨帝母が手に持っておられる吉祥果という果物が
中国や日本ではどの果物のことかわからなかったので
表現するときにざくろの形を借りていることが多く、
ざくろは吉祥の樹とされています。
実の中に小さい種の入った実がぎっしり入っていることから
子孫繁栄を象徴します。
昨日にひき続き、食べ物のお話。
托鉢の鉢に入っていて、ある条件を満たすものであれば
肉を食べることも差し支えなかった初期仏教の時代。
このころはまだ手に入るもので食事を作ることの方が優先で
中身について注文をつけている場合ではない、ということが
多かった時期。
豊かな人ではなく乏しい人からの布施の方が功徳が大きいもの。
今貧しいなら、布施して今後のために徳を積む必要がさらに強くなります。
そういうこともあって、僧侶たちは富裕な屋敷に行くよりも
貧しい家に赴いて托鉢をすることが多かったのです。
不殺生戒は仏教の根本にあるものでしたが
それを守ることも難しい人たちもいたわけです。
しかしその後、農業技術の発展によって穀物が安定生産できる
ようになってくると、植物系の食べ物を
中心に食べた方が望ましいという考え方が出てきます。
特に大乗仏教は広く衆生を利益することを重視する教え。
不殺生戒を守ることの重要性はより強くなります。
インドでも菜食をよしとする集団が多くなり、
仏教が中国に入った頃にその傾向はさらに強まります。
日本に入った仏教は中国仏教の影響を強く受けているので
最初から菜食主義だったわけです。
以来、日本においては僧侶の食べ物は基本菜食。
野菜でも「五葷」といって五種類の匂いの強いものは食べては
いけないという決まりもあります。
これはニンニク、ニラ、ねぎ、らっきょう、ノビルの五種類。
匂いが強いもの、辛いもの、精がつくもの。
これが五臓に負担をかけ体の気を損ない、心の安定を乱すと
されていたからです。
これは五行説の考え方からきています。
今でも修行道場ではこれらの五葷を使いませんので
お味噌汁やうどんの薬味にネギは使いませんし、
精進カレーには肉はもちろんですがにんにくや玉ねぎも入りません。
肉なしは厚揚げやベジミートが入っているのでさほど気には
ならないのですが、にんにく玉ねぎなしだとカレーの甘みやこくが
ちょっと弱くなります(笑)
日本においては、肉食を禁じる法令が奈良時代以降
何度も出されており、明治時代に開国するまでは
僧侶以外の普通の人も基本的には菜食。
ただ、在家の人は魚は食べていましたし、
肉を薬のようなものとして食べることは行われていました。
なので、江戸時代までは出家も在家もほぼ全員
おおむね精進といえば精進だったわけです。
明治時代に諸外国との関係の中で肉食が解禁になりました。
僧侶に対しても、「肉食妻帯蓄髪等は勝手たるべきこと」
という太政官令が明治五年に出され、僧侶も肉食や妻帯、髪を
伸ばすといったことを好きにしていいことになりました。
好きにしていい、ということは
今まで通りでもいいということでもあるんですけど、
それまでのやり方はやめちゃった人が多かったわけですね。
ちなみに、お酒も不飲酒戒があるので
普通は飲んではいけないのですが、
治病のために少し服するのはOK。
薬酒というものもありますしね。
病気の時は身体を温めて休むのが一番です。
いずれにせよ、何かを食するときに
貪りの気持ちでないことが大事です。
肉や酒が禁止なのは、美味しくてついつい
食べ過ぎたり飲み過ぎたりすること、
特にお酒は飲んで酔ってしまって
感情や行動の抑制を失うことを戒めているから。
極端を離れて、常に適切に行動できること。
食事の点からそれを求めるとしたらこういう形になるよ、
というのがさまざまな食べ物に関しての規定に
つながってるんじゃないかなと思います。