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時事問題解説:年収の壁(103万円問題)について(2025年2月19日執筆)
年収の壁問題が日本で問題になっている理由
日本では、特定の年収を超えると社会保険料の負担が増えたり、扶養控除の適用がなくなったりするため、パートやアルバイトで働く人々が「ある一定の年収を超えないように働く時間を制限する」ケースが多発しています。この「年収の壁」問題が、働く意欲を削ぎ、労働市場に悪影響を与えていると指摘されています。
主な「年収の壁」の種類
103万円の壁:
所得税の扶養控除が適用される上限。
これを超えると配偶者の税負担が増える。
106万円の壁(社会保険の壁):
一定規模の企業で働く場合、この金額を超えると社会保険料の支払い義務が発生し、手取りが減る。
130万円の壁:
配偶者の扶養に入れる上限。
これを超えると社会保険料を自分で払う必要があり、収入増加のメリットが減る。
特に人手不足が深刻な業界(介護・飲食・小売など)では、この壁のためにパート従業員の労働時間が抑えられることが大きな問題となっています。
自民党が103万円の壁引き上げに難色を示す理由
財政負担の増加
103万円の壁を引き上げると、多くの世帯で所得税がかからなくなるため、国の税収が減る。
さらに、社会保険料の免除範囲が広がる可能性があり、年金・健康保険の財源確保が難しくなる。
社会保険制度の持続可能性
「年収の壁」を単純に引き上げると、扶養控除を受ける人が増え、社会保険料を支払う人が減る可能性がある。
これにより、社会保険制度の維持が厳しくなる。
企業側のコスト増加
壁の引き上げによりパート・アルバイトの労働時間が延びると、企業が負担する社会保険料の増加につながる。
特に中小企業では、雇用コストの上昇を懸念する声が強い。
労働市場への影響
壁を上げても、根本的な税制・社会保障制度の見直しをしなければ、いずれ再び新たな壁が問題化する可能性がある。
自民党内では、「部分的な引き上げではなく、労働市場全体の改革が必要」との意見もある。
今後の動向
現在、自民党は「段階的な引き上げ」や「一定期間の社会保険料免除措置」などの代替案を検討しています。一方、野党や経済界からは「もっと抜本的な改革が必要」との声もあり、引き続き議論が続く見込みです。