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夜の扉




彼女は、僕に平気で言う。
あなたが嫌いと。
いつもの渋谷は悲しい色のよううで、おれは彼女を抱いた感触を忘れない。
否、忘れようとして、手首を持った、気にならないように、言葉を探すが、有線から悲しみのラッキーが流れてきた。
僕は思った。
下らない歌が流れていると。
齧り付いたりんごは、いつも、虫に食われ、無惨な姿を吐いている。とりあえず、駅に行こう。
そう思った矢先に、いつもの定食屋の前を通る。政治家たちが悪巧みをしているのを横目に、足取りを軽くし、路地の隙間にさく花を探すがなかった。電気がまた、昼は消えている。
橋を探して歩いたが、決して見当たらない。
今、僕は橋の上にいる。
川の流れなど知らないように、白い鳥は僕の後方から前へと、燕ではないか?
と。

彼女と歩いた記憶を頼りに、任務を遂行するためにここにいる。任務とは人を笑わせることだ。
探偵とは、名ばかりのもので、バイクすら持っていない。
あるのは、小さな頃の記憶くらいのものだ。
電柱にもたれかかった木が、もたれている。
さあ、仕事だと、かけだした僕に、フィクさんは言った。
「いったことがあるんだ、イスの国に」
フィクさんの目は、臆病て狂気と下心に、濡れていた。
食堂には、夢があるとは、とんだ笑い話である。
そろそろ日が暮れてきたので、次の停車場まで、向かう。

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