雨 #描写遊び
「明日も雨かな。また洗濯物干せないかな」
「子どもの着替え、まだあったかな」
「生協の注文もうしたっけ?おむつ頼まなくて大丈夫だったかな」
私の頭の中は忙しい。就寝前、ベッドの中で目を瞑ると、雨どいから落ちる雫のように絶え間なく考え事が頭に浮かぶ。
◇◇◇
寝室の戸を開けると、そこは真っ暗で静寂に包まれていた。
勘を頼りにして、手探りでベッドへ潜り込む。
ギシ、ギシ、微かにベッドを軋ませながら、身体をあずける。
外は水圧の強いシャワーのように雨が降っていたが、寝室は窓を閉めているためかほとんど聞こえない。
静寂と暗闇に感覚が慣れてくると、ベランダの柵にコン、コンと雨があたる様子が微かに聞こえてきた。
少し高い体温が空気を介して私の左腕まで届くことで、5cm左に子どもが寝ていることを感じる。
寝返りした拍子に、ふんわりとした手が私の頬にあたる。起こしたくない、でも触りたい、しばしのせめぎ合いの後に触りたい衝動が勝ち、焼きたてのパンのようにしっとりまんまるな手をそっと握ってみる。
子どもがポリポリと腕を軽くかき、反対方向へ寝返りを打つ。空気が動くのを感じる。
エアコンが効きすぎていて少し寒いくらいだ。汗っかきの息子に合わせた温度設定だから仕方ない。ひんやりとした空気を遮るように、少し重さのある毛布をお腹にのっける。
外の雨が激しければ激しいほど、寝息が充満する部屋にいられる幸せを実感する。
そんな幸福に浸りつつ、頭では明日やることをぐるぐる考える。そして一定のリズムで繰り返す子どもの寝息に自分の呼吸を合わせているうちに、意識が遠のいていくーー
◇◇◇
Emikoさん主催の描写遊びに参加してみました。難しいけど楽しかったです。