ジャーナリング歴40年以上、ライター江角悠子さんに聞く、夢が叶う魔法のノートの秘密
「書いたことが叶う」そんな魔法のようなノートがあると聞いたら、あなたも手に入れたいと思いませんか?
「魔法のようなノート」と書きましたが、用意するのは普通のノートで構いません。自分の思考や感情をただノートに書き出すことを続けることで、なんの変哲もないノートが、書いたことが次々に叶っていく魔法のノートに変化するというのです。近年注目を集める「ジャーナリング(書く瞑想)」と呼ばれる手法です。
今回は、ジャーナリング歴40年(!)以上、公私ともに文章を書き続けているライターの江角悠子さんに、ジャーナリングを続けることで江角さんの身に起きた出来事、続けるコツなどをお聞きしました。
ジャーナリング歴40年以上、書き続けたノートでトランクが埋まった
ーー江角さんは長年、ジャーナリングを続けてきたとお聞きしました。
小学生のときに日記を書く宿題がありました。そのときから今までずっとなにかしら書き続けています。なので、もう40年以上書いていることになりますね。10代の頃は、表紙がハードカバーで本のような装幀になっているものや鍵付きのものなど、好きなノートを見つけて書いていました。書き続けたノートは、保管ケースとして使用しているトランクが満杯になるくらいの量になりました。
ーーどんなお子さんでしたか?
学生時代は周囲に嫌われないように、浮かないようにとそればかり考えているような子でしたね。面と向かって意見を言うのが苦手だったのでモヤモヤを抱えがちで。「これを言われて嫌だった」とか「こんな出来事があったけれどわたしはこう思った」というように、誰にも言えない溜まった思いを吐き出す先としてノートを使っていました。
大学生になると書く場所がノートから匿名ブログへと変わるのですが、書く内容は変わらず。日々あったこととそのとき抱いた気持ちがほとんどでした。当時、書いていたサイトが突然閉鎖されてしまったことがあったんです。数年書き溜めたブログが消えてしまいショックを受けていると、一通のメッセージが。わたしのブログを読んでくれていた読者の方から「実はあなたのブログをすべてコピペして保存していますので、データで送りますよ」と。「えー!そんなことをしてくれていたなんて!」と、もうびっくりで、ありがたくデータをいただきました。この匿名ブログの経験を経て、文章を人に読んでもらうこと、そして反応をもらえる嬉しさを知りました。それが後にライターを目指すきっかけになったようにも思います。
ベッド脇のノートには、寝ているときに思いついたアイディアを書く
ーー現在は、日常生活の中にどのようにジャーナリングを取り入れていますか?
今は2冊のノートを使っています。持ち歩く用に一冊、ベッド脇にもう一冊。持ち歩く用のノートでは、感情や思考の整理にも使いますが、お仕事のTodoも書いています。
ベッド脇のノートは、もともと夢日記を書こうと思って置き始めました。夢は潜在意識に繋がっているような気がしていて、書き残しておくことで、何かいいメッセージを受け取れるような気がしたんです。実際は、寝ているときに思いついたことを忘れないように書き留めるために使っています。起きてすぐにベッドに寝転んだまま書いています。
不思議と夢が叶う魔法のノート
ーーそういったなかで、書くことで心の変化に気付いていったわけですね。
そうですね。あるとき、ノートを見返していて、同じ失敗を何回もしていることに気がつきました。例えばわたしは財布を忘れがちなんですが、ノートには何度も失敗した記録が残っている。ならば、次からは困らないようにスマホケースにお札を忍ばせよう、手帳は忘れないから手帳に挟んでおこうとか、忘れても大丈夫なように仕組みで解決することにしたんです。書いていなければ日常にかまけて流れていってしまうような出来事も、書いておくことで過去の経験を今に活かすことができる。それが書くことの良さだと思うんです。
ーー生活を大きく変えるようなことはありましたか?
たくさんあります。例えば「京都ライター塾」をスタートさせたこと。2019年のノートに「いつかライターを育てるようなことをやりたい」と漠然と書いていたのですが、2020年にはライター塾第一期ををスタートさせていした。約1年半後には叶っていたことになります。
書くと不思議と望む方向に進めていたりやりたいことが叶ったり、欲しいものが手に入ったり。買い物リストと同じだなと思ったんです。夢も書いておくと忘れずに行動する。書くときは叶えばいいななんて、気軽な気持ちで書いているのに、その後気付けば叶っている。まるで魔法のよう。
でもこの魔法は、誰でも起こせる魔法だと思うんです。
日々やらなければならないことで一日が終わってしまうことも多いのですが、忙しい日々から少しの時間、距離を置いて、ノートに向かうことで自分の気付かなかった願望に気が付く。さらに、言語化しようと努めるうちに願望の輪郭をはっきりと描けるようになる。そしてやるべきことが整理されて動きやすくなる。それが、書いたことが叶う、の秘密ではないでしょうか。
ーー江角さんはヨガの経験もあるんですよね。目を閉じて行ういわゆる普通の瞑想も生活に取り入れていると聞きました。
はい。目を閉じて行う瞑想は8年近く続けているのですが、書く瞑想であるジャーナリングと共通していることは「自分と向き合う」ことだと思っています。
「楽しい」や「やりたい」など自分の気持ちは脇に置いて、普段の生活ではやらなくてはいけないことで一日が終わってしまう。瞑想やジャーナリングをすると「本当はやりたくないな」と客観的に自分の気持ちに気付くことがあります。気付くことで「今絶対にやらなくてもいいことならばやらないで休もうか」と、行動と意識を一致させられる感覚があるんです。自分の気持ちを置いてけぼりにしないでいられるというか。
目を閉じて行う瞑想と違い、ジャーナリングの強みは残しておけること。良いことも悪いことも流れていく日々の中で、記録して見返すとさまざまな発見がありますよ。わたしも書くばかりじゃなくてもっと見返したいと思っているところです。
続けるコツは、続けようとしないこと
ーー書かなきゃ、という義務感で書いていたことはありましたか?
ないですね。いつも「書きたい!」と思って書いています。溜まったモヤモヤを言葉にして誰かに吐き出せたらいいんですけど、口下手なため、わたしにはなかなかできなくて。だから書いて満足しています。たとえがアレですが、書かないと便秘するみたいな感覚になります。
書くことで初めて自分の気持ちを認識することもあります。「腹がたった」や「悲しかった」など。それで「あのときわたしは怒ってたんだよね」と自分の感情を認めてあげられる。そうすると安心するんです。自分の気持ちを受け取ってもらえるというか。受け取り手も自分なんですけどね。
ーージャーナリングを生活に取り入れるポイントを教えてください。
続けるコツは、続けようとしないこと。毎日やろう、続けようとするから挫けるんです。気が向いたときにやればいいんです。それととにかくハードルを下げること。例えばノートを開くだけ、前日書いたことを見返すだけ、何ならノートに触るだけでもいい。これなら絶対できるということを目標に設定したらいいと思います。わたしは気が向いたときにだけやる緩さだから、ジャーナリングを40年も続けてこられました。それでも十分ジャーナリングの恩恵を享受できましたよ。