ダ・メッシーナの斬られた絵@マンドラリスカ美術館【愛しのミュージアムグッズ】#2
お気に入りのミュージアムグッズ、2回目は、イタリアのマンドラリスカ美術館で買った黒い手帳です。
◆マンドラリスカ美術館って、どこ?
たぶん、日本では、ほとんど知られていないと思うマンドラリスカ美術館。
シチリア島の北海岸、ティレニア海に面した小さな漁師町チェファルーにある美術館です。
以前、NHKテレビ「旅するイタリア語」で、俳優の小関裕太さんがチェファルーを訪れる場面がありましたが、そのときも、この美術館はスルーされました。
そんな地味な美術館ですが、あのアントネッロ・ダ・メッシーナの名画が見られるのです!
◆アントネッロ・ダ・メッシーナって、誰?
たぶん、日本では、あまり知られていないと思うアントネッロ・ダ・メッシーナ(1430-1479)。
『芸術新潮』を読まれていて、ヤマザキマリさんのファンの方なら、この画家をご存じかもしれません。
あのレオナルド・ダ・ヴィンチにも影響を与えた画家、としてヤマザキマリさんの漫画『リ・アルティジャーニ ルネサンス画家職人伝』(新潮社)に登場しています。
ダ・メッシーナは、名前からわかるとおり、メッシーナ生まれの画家です。(ちなみに、ダ・ヴィンチはヴィンチ村出身、カラヴァッジョはカラヴァッジョ村出身です)
ナポリで修業しながら、フランドル絵画の写実を身につけ、イタリアに油彩技法をもたらした重要な人物、といわれています。
彼の代表作は、パレルモのシチリア州立美術館にある《受胎告知の聖母》。
ヤマザキさんの漫画では、ダ・ヴィンチがこの聖母を見て衝撃を受けた場面が描かれていました。
◆なぜ、絵が斬りつけられたのか?
前置きが長くなりましたが、今回のメイン作品は、マンドラリスカ美術館の至宝、ダ・メッシーナの《ある男の肖像》です。
どうです? この謎めいた微笑……
この男のあざけるような笑みに「イラっ」とした人が絵を斬りつけた、という物騒な事件も過去にあったそうです。
実際、美術館でこの作品を見たとき、私も「ちょっとイラっとくる……」と感じてしまいました。
ヤマザキマリさんは、本作品について「容赦のない写実力。メッシーナの描く肖像画には、その深奥に何があるのか、という謎かけがある。人物の表情に宇宙すら感じますね」と語っています。(『芸術新潮』2019年7月号160頁)
◆美術館の受付で買いました
やや不快感のある絵ですが、インパクトがあり、一度見たら忘れられなくなるほどのパワーもあります。
この得体のしれないパワーを手元に残しておきたくて、受付の片隅に置いてあったグッズの手帳を購入しました。
スマホサイズの小さな手帳で、厚さは1センチほど。中の紙は無地で、やや厚め。紙の質は、あまりよくないです。
◆名画パワー?!
一度、この手帳を仕事で使ってみたことがあります。緊張する取材先に行くことになったので、パワーが欲しいと思ったのです。
驚いたことに、「イラっ」とする男の顔は、取材現場で見ると、頼もしい上司のような表情に思えました。
「大丈夫だ。やってみな!」と、言われた気がしたのです。
また、仕事がうまくいったとき、この顔を見ると
「グッジョブ」と、言っているようにも思えました。
見るたびに、さまざまな感情が沸きおこる絵画。
イタリアでは、この絵をもとにした小説も出版されています。
やはり、パワーのある名画です。
参考文献:
『シチリアへ行きたい』(新潮社)
『芸術新潮』2019年7月号(新潮社)
『リ・アルティジャーニ ルネサンス画家職人伝』(新潮社)