沈黙が語るアメリカの暗黒史:『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が描く真実
マーティン・スコセッシ監督の新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、ただの歴史映画ではない。物語の中心にあるのは、言葉にならない沈黙と、それが持つ力だ。言葉が語られない瞬間、観客は何も語らずとも語られる真実を感じ取る。映画が描くのは、アメリカの歴史の中で隠されてきた恐ろしい事実だ。だが、この映画が最も強烈に訴えかけるのは、何が語られ、何が語られないかに隠された意味だ。
物語はオクラホマ州、オサージ族の人々の土地で油を掘り当てたことから始まる。彼らの富を狙い、社会の隅々にまで浸透した腐敗と暴力。エルネスト・バークハート(レオナルド・ディカプリオ)は、兵役を終えたばかりの若者で、何も持たず、何も知らない。しかし、彼の人生は叔父のウィリアム(ロバート・デ・ニーロ)によって歪められていく。
ウィリアムは、エルネストにオサージ族の女性モリー(リリー・グラッドストーン)と結婚させ、彼女の家族を排除して富を手に入れさせようと画策する。しかし、エルネストはモリーを愛してしまう。その愛は、彼を無意識のうちに、さらに深い闇へと引き込んでいく。沈黙の中で目を背けられた真実が暴かれる瞬間、彼の心には何が残るのか。