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#108 『かきあげ天玉そば』
蕎麦って、頻繁に食べるものではない。
うどんやそうめんは私にとって、
「レンジで3分半待つだけで、いつも変わらぬ美味しさを提供してくれる冷凍うどん」
と
「2分茹でるだけで出来上がってくれる、夏はこいつ無しでは生きられないそうめん」
としてメジャーなのだが、
蕎麦は私の生活に身近ではない。特に理由はなかったが、スーパーで手に取らないのだ。
だからか 蕎麦は外食 というイメージがある。
先日、鳴子温泉駅へ。
駅名に温泉、とついていることから明白なように、温泉街だ。さすが、風情のあるおみやげ屋さんがずらりと並んでいる。
昔ながらの良さが残る温泉街を両脇にありありと感じながら、目星をつけていた「ふじや食堂」へ。
おばあちゃんの家のようなお店。席に着くなりいただいたあたたかいお茶は、どこか懐かしい味がした。
メニューが豊富だ。これは直感でメニューを決める派の私も、さすがに迷うラインナップ。
温泉街に来たら温泉卵は絶対に入れる一択でしょう、それしか道はないでしょう、ということだけは固く決意し、しばらく迷った。
決めた。
『かきあげ天玉そば』
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冬、でしかない。
カリカリのかきあげ。固すぎず柔らかすぎない麺。
かきあげのカリカリが汁に浸ってだんだんとしなしなになる。カリカリのうちに、と上の方を急いで食べる。安定においしい。
しなしなはしなしなで、汁が染みて、食感だけでなく味も変わっておいしい。
汁物の上に乗った揚げ物は、こうやって2度楽しめるところが良い。
私は卵が好きなので、温泉卵は終盤に。好きなもので締めたい派閥のひとりだ。
割ってみるといちばん、ちょうどそこ、という加減のとろとろさ。蕎麦と、かきあげを少しずつレンゲに乗せて、そこに温泉卵の半分も。ミニかきあげ蕎麦を作って口へ運ぶ。
残りの半分の温泉卵は、卵のみでいただく。贅沢だ。贅沢極まりない幸福が口の中に広がる。
年末が来たかと錯覚した。
それほどの安心感を与えてくれる空間と、かきあげ蕎麦だった。
蕎麦もかきあげも温泉卵もそれぞれが特別でスペシャルだ。夢の共演のような味わいをどうもありがとう、と伝えたい。
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これからも蕎麦には特別でいてもらおう。