「ワレワレのモロモロ」〜演劇のワークショップが適応課題の解消に効果的な理由〜
こんにちは!Engagement Run!Academy講師兼コミュニティマネージャーの三浦です!
普段は、講師として、クラスやワークショップを実施することが多いですが、参加者としてワークショップに参加することも大好きです。
「ハイバイ」という劇団が好きなのですが、主催の岩井秀人さんが、一般の人向けに「ワレワレのモロモロ」ワークショップを実施されるということで、先日、受けてきました!
「ワレワレのモロモロ」ワークショップとは?
ご興味ある方は、岩井さんによるnote記事もどうぞ!
「ワレワレのモロモロ」ワークショップとは、車座になり、参加者が1人ずつ「ひどい目にあった」話をして、その話の再現シーンを参加者たちで演じてみるワークショップです。
基本形としては、1回目は、話し手の人が自分の役を演じ、その他の登場人物を聞き手の人達に演じてもらい、2回目は、話し手の人の役も聞き手の人が演じ、話し手はお客さんとして、客観的に自分がひどい目にあった演劇をみることになります。
お互いの話を聞いて、状況を共有して演じてみることで、
今まで気づかなかった感情が芽生えたり、今までと違う物事の
捉え方ができたりと新しい感覚が見つかります。また、自分の体験が他者によって演じられることで、過去の体験に新たな視点を得ることができます。
さて、ここからは、この「ワレワレのモロモロ」ワークショップが、エンゲージメント活動にも効果的なのではないか?と僕が思った理由を考察してみたいと思います。
組織の課題は、技術的問題と適応課題に分けることができます。
技術的問題とは、新たな知識やスキルを身につけることにより、客観的な「正解」を導き出すことで、解決していく問題のことです。
例えば、「野球の知識やスキルがない」場合は、野球のルールやバットの振り方などの知識を得て、素振りなどの練習を積み重ねて、スキルを得ることで技術的問題は解決していきます。
一方、適応課題とは、自分や組織が無意識に持っている
思い込みや固定観念(アンコンシャス・バイアス)に気がつき、その奥にある願いに向かって、トライ&エラーを繰り返していくことで解消していく課題のことです。
野球の例えでいうと、いくら練習しても試合に勝つことができない。そこに、「チームメンバーは信用できない。」という無意識の思い込みがあるとしたら、これは適応課題です。
この思い込みに気がつき、それでも試合に勝ちたい、という強い願いがある場合、例えば、「チームメンバーのことを信用してみよう」という新たな選択肢が生まれます。
無意識の思い込みが顕在化すると、適応課題は解消に向かいます。
さて、エンゲージメント活動でおこる課題の多くは、適応課題で、特に人と人との関係性に生じる適応課題を多いです。
例えば、チームメンバー同士の関係性や上司と部下の関係性、経営陣と現場の社員の関係性などを想像していただくと実感して頂きやすいと思います。
一方で、これまで私たちは、組織で起こった課題を技術的課題として解決しいていくことに慣れているため、この「人と人との関係性」も技術的問題として捉えてしまい、なかなか解決に向かわないということが起きています。
例えば、上司との関係性に悩んでいる人が、「上司との関係性を良くする解決方法を教えてほしい。」と思っていたとすると、それは技術的問題としてこの課題を捉えているということです。もちろん「コミュニケーションスキルを学ぶ」などの技術的問題を解決するアプローチもサポートにはなるのですが、根本的には、この課題は、
本人が、その上司との関係性の中で持っている無意識の思い込みが顕在化することで解消に向かっていく適応課題です。
では、どうすれば、自分の無意識の思い込みに気がついていくことができるでしょうか?
その方法のうちの一つが、メタ認知です。自分の思考や感情をもう1人の自分が外から見るように捉える方法ですが、これを1人で行うのは難易度が高いです。
そこで、「ワレワレのモロモロ」ワークショップです。先に述べたように、このワークショップでは、
これらの仕組みにより、様々な視点でのメタ認知が可能になり、無意識の思い込みやバイアスに気が付きやすい状態を作り出すことができます。
例えば、「自分の発言を否定する人は、自分のことを嫌っている」という無意識の思い込みがあるとすると、上司が成長のために伝えてくれたフィードバックに対しても「自分のことを嫌っている」材料になってしまいます。この役を人に演じてもらうことで、「あれ?客観的に聞いてみたら、上司は自分の人格を否定するようなことは言っていないぞ?」とか、上司役を演じた人が、「思いやりのあるセリフだと思ったよ。」と伝えてくれたとか、客観的に見ることで、「上司もフィードバックすることに慣れていない人だから、緊張して、表情も硬くなっていたのかな。」みたいな視点を見つけていくことによって、徐々に自分の無意識の思い込みに気がついていく、といったことが、起こりやすくなります。
さらに、このお話の当事者ではない、聞き手の人達も様々な視点からこのお話を演じたり、観たりすることによって、自分の人生と重なったり、同じような人間関係の悩みのヒントが見つかったりします。
言語化だけではなく、実際に身体を使って様々な役を演じ合ってみるという仕組みが、この追体験やメタ認知の感覚を、より味わいやすいものにしていたと感じました。