春日神霊の旅ー杉本博司 常陸から大和へ(神奈川県立金沢文庫)
「芸術新潮」2022年1月号「杉本博司と日本の神々」読んで(読書メモここ)、行かなくては、と思っていた、神奈川県立金沢文庫「特別展 春日神霊の旅 -杉本博司 常陸から大和へ」に行ってきた。金沢文庫、入るの何十年ぶりかな。まんぼうが出ているので日時予約制。そんなに混んでいないので、直前でも予約は問題なさそう(当日朝8時まで予約OK)。
金沢文庫と小田原文化財団の共催で、東国所縁ともいえる春日信仰を紹介する展覧会。杉本博司の展覧会でよくある、掛け軸と、手前の置物を取り合わせて展示しているものが多い。文化財保護のため会場はかなり暗くしてあり、撮影は不可。須田悦弘の朝顔とか、旧白洲正子蔵の十一面観音像とか、他の会場なら撮影OKそうだった展示品も含め、まるっと撮影禁止。
展覧会は【序章 神々のすがたー杉本博司『華厳滝』と『那智滝』ー】、【第一章 春日社景・鹿曼荼羅と古神宝ー春日信仰の世界ー】、【第二章 鹿島立ちー常陸から大和へー】、【第三章 春日の神と仏ー貞慶・信円・明恵ー】、【第四章 春日若宮ー新たな神の出現】、それに【国宝 称名寺聖教 春日信仰関係資料】という構成で、約100点(展示替えがあるので全点は展示されていない)。ひとつひとつに丁寧なキャプションが付いていて、たぶん仏教の基礎知識があれば、もっと楽しめたのではないかと思う。
これまでに、杉本博司展(感想・写真等ここ)や、江之浦測候所(写真ここ)などで、杉本博司が表そうとしているものについて、色々見てきたが、その中で、春日大社信仰に特化した部分だけでもこんなに深掘り出来るのか、と驚かされた。トップ画像の春日神鹿像は、千葉市美術館で展示されていた時に写真を撮ったものだが、これが今回もチラシやポスターでフィーチャーされていて、印象的。鎌倉時代の神鹿像に、須田悦弘が鞍や榊を補作して、上に鎌倉時代の文殊菩薩懸仏をのせたもの。他にも室町時代の銅製の神鹿像で、須田悦弘が蓮華坐をのせ、その上に杉本博司の海景写真をおさめた水晶の五輪塔をのせたものなどもあった。神鹿像は、他にも立体も掛け軸もあって、掛け軸の鹿は、目元のしわが、絵本バムとケロシリーズ(島田ゆか)のバムの顔みたいに見えたりして。
春日大社の遠景を描いた掛け軸(曼荼羅)とか、懸仏という円盤に立体で仏を浮き彫りにしたもの、春日大社におさめられた銅鏡、鹿島神宮の白玉、春日大社の水精玉という水晶の珠も面白い。仏像(十二面観音が沢山あった)や厨子、唐櫛笥という美しい台なども印象的。
不勉強すぎて、結局春日大社信仰ってなに?、と語ることは出来ないけれど、信仰の象徴が色々な形をとって、今でも目に触れられる場所にあるということが有難いな、と思いつつ鑑賞した。