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八幡垣睦子 古裂のメタモルフォーゼ(丸紅ギャラリー 東京・竹橋)
竹橋(大手町からも至近)の丸紅ギャラリーで開催中の「八幡垣睦子 古裂のメタモルフォーゼ」展を見てきた。2024/11/26-2024/12/21。主催:丸紅ギャラリー、共催:出雲キルト美術館。
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使われている材料が、着物や帯など、日本古来の繊維商品なので、伝統工芸品的風情を漂わせているが、パッチワークの手法は、欧米の伝統的キルト技法を土台にしている。
島根県雲南市に生まれる。
島根の豊かな自然からインスピレーションを授かり染色、刺繍、キルティングなど西洋と東洋の手仕事を組み合わせてタペストリーや掛け軸などの作品を制作。 江戸期から明治期の着物を補強、修復し作品へと昇華させ独自の世界観を表現し続け、東京都現代美術館をはじめ国内外にて作品を展示。2006年に日本で初のキルトの美術館「出雲キルト美術館」を開館。2013年には出雲大社平成の大遷宮奉祝展を開催。建物やインスタレーションを布作品と融合させた空間展示が注目されて
会期中の展示替えはなく、上記「丸」を含め、24点の作品が展示されている。ギャラリー内は撮影禁止。出雲キルト美術館のウェブサイトでも作品は紹介されているが、おそらく意図的に、細部とか全貌などが見えにくいように紹介していて、百聞は一見にしかず、という感じになっている。
丸紅が、創業当初呉服の商いを多く行ってきたこともあり、丸紅ギャラリーの展覧会の中でも丸紅株式会社収蔵の着物等の展示をすることが結構あるのだが、そのゆかりで、着物をベースとしたパッチワーク作品という、他に類を見ない作品(これは美術品なのか工芸品なのか?)の展示をすることになったのだろうかと想像する。特に予備知識なく足を運び、八幡垣のキルト作品に圧倒される。
展示作品の多くは縦横2メートル前後の巨大なタペストリーで、縁は綿が入って分厚くなっているものが多い。ベースとなっているのは着物等で、着物の柄を出しながら、その上に立体的に、花や鳥をキルトのピーシング(布を切り取って裏側で糸留めして、うろこのような細かいパーツにしたもの)を重ね合わせて構成し、ベースの上に縫い付けている。ベース部分も、キルティング加工されている部分もあり、丸とか波形とか、糸目の見える文様は、アメリカンキルトのベッドカバーとかでも見られるような、ちょっと洋風なパターンになっているものもあり、生地は和風、文様は洋風の折衷になっているなと思う。
全体を薄いピーシングを重ねて構成し、風景画を作っている作品もある。素材は絹と木綿が中心で、一部の作品では麻や毛なども用いられている。
ピーシングの中に金糸がきらめいてるものなどがあり、あ、帯を切ってキルトにしたんだなぁ、と眺める。原材料としては、打掛、留袖、着物、帯、婚礼布団、行衣、襦袢、白無垢、袈裟、羽織、布団など。1点だけ、蚊帳を染めて柳のプリント文様を入れ、そこにアップリケ状に睡蓮をちらした作品があり、涼やかで印象的だったが、全体としては内側に綿を入れたキルトらしい風情の作品が殆ど。
そして、キルトを補完するように刺繡をほどこした作品も多い。
他に類を見ない、と書いてしまうと陳腐な表現だが、本当に、今まで見たこともなかったようなものばかりである。
伊東若冲の動植綵絵 の「老松白鳳図」をモチーフにした「鳳凰」という作品があり(丸紅ギャラリーのウェブサイトにも写真が出ている)、これのメーキングをパネルで紹介していて、どのように作品を製作しているかがよくわかる。
展示の終わりには、キルトやプリントの紗に触れられるコーナーもあった。
実物の大きさを実感し、細部の作りを眺め、使用された素材はもともとどのような姿をしたものだったのかを想像する。これは展覧会場でしか楽しめない作品だったな、と、満足して会場を後にした。
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