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民藝の100年 柳宗悦没後60周年記念展(東京国立近代美術館)そして原田マハ『リーチ先生』

国立近代美術館の「民藝の100年」展(柳宗悦没後60周年記念展)を見てきた。想像はしていたが、本当に展示数が多く、かなり駆け足、そして結局2階の展示は時間切れで見られず。リベンジしなくては...。平日の午前中だったけれどそこそこの人出。結構細かくキャプションが付いているので、じっくり読みながら眺めるために、人の見ていない展示物を見て戻ったり、とせわしない動きになった。
(トップ画像は、展示中唯一写真撮影可能だった柳宗悦の書斎の再現)

展示室は時代順に、
1.「民藝」前夜ーあつめる、つなぐ(1910年代~1920年代初頭)
2.移動する身体-「民藝」の発見(1910年代後半~1920年代)
3.「民」なる趣味ー都市/郷土(1920年代~1930年代)
4.民藝は「編集」する(1930年代~1940年代)
5.ローカル/ナショナル/インターナショナル(1930年代~1940年代)
6.戦後をデザインするー衣食住から景観保存まで(1950年代~1970年代)
となっていて、ロダンの彫刻、セザンヌの絵から始まり、河井寛次郎や浜田庄司やバーナード・リーチの陶芸作品、英国のスリップウェア、朝鮮半島から渡ってきた陶芸作品、日本でデザイン化された木や竹の椅子、木製のうつくしい箪笥、目をみはるようなこぎん刺し、時代ごとに「白樺」とか「民藝」という雑誌でアウトプットされた、日常生活の様の美を少しずつたどる。最後には息子柳宗理のデザインした作品も。これって、駒場の日本民藝館とかに見に行ったら、もっとこれでもかこれでもか状態になっていたのか。たぶん展示点数はぎりぎりに絞られていると推察され、厳選された道筋は、民藝運動への導入としてはきわめて適切だったのではないかと思う。
原田マハ『リーチ先生』(集英社文庫)は、ふとしたきっかけから英語を学んだ若者がバーナード・リーチのアシスタントとなり、遂には浜田庄司と共にリーチの帰英に付いていってコーンウォール地方で陶芸に取り組む、という架空の物語だが、今日の展示を見ていて、この作品と作品の間に、亀乃介の作品があったかもしれない、などと思ってしまうほど、この小説はわたしの中で強く印象付けられていた。生活の中で使われる、普段使いの器や生活必需品の中にやどる美しさ、その地方の独自性が、丁寧な展示の中で浮かび上がってくる。明治以降、生活用品は大量生産化されていたが、その地域でしか生産されてこなかった生活用品が幾つも、じり貧になっていた生産地で新しい息吹が吹き込まれる。
展示品の愛らしさ、美しさ、日常の器として使うことを想像しただけで心愉しくなる静かな存在感。戦時中でも、弾圧されることなく容認されてきた民藝運動の懐の深さなどにも感じ入る。

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