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鬼滅の刃•二次創作【隻腕の天鉄刀】後編

序  お前は強い。柱である私でさえお前に勝てず、膝を折っている。だが、お前はいつか負ける。それが鬼なのか、或いはどこぞの剣士なのか。それは分からない。それはお前が弱いから負ける訳じゃない。しかしながらその敗北はきっとお前の得難い経験となるだろうと、私は思う。  私は心配なんだ。強いお前は邪念も雑念なく、ただただ雑じり気のない殺意だけで刀を握っている。まるで恐ろしく鋭い刀を見ているようで、とても魅力的な輝きに吸い込まれそうになるが、一方で途轍もない不安も覚える。お前が、お前

    • 鬼滅の刃▪︎二次創作【隻腕の天鉄刀】

      鬼滅の刃【隻腕の天鉄刀】 序  まるで炎の精霊のようだった。その武士が巨木ほどの躯体である上、強靭であるはずの鬼の腕を見事に切り裂いたことに感嘆する。他方で私への興味が尽きないのか、警戒心こそ解かないものの、視線は雄弁に私が何者かと問い質している。 聞けば男は鬼を殺しているという。これは長い歴史の中にある復讐と罪滅ぼしの過程だと。鬼神のごとく強い剣士の技とは裏腹に、人間らしい孤高の姿に、私は自らの立場も役目も忘れていた。それこそ後光を背負う仏に頭を垂れるように、気

      • 鬼滅の刃▪︎二次創作【不死川実弥と粂野匡近】

        起 鬼が憎い。その一心だけで鬼殺隊に入った。同期には既に呼吸を習熟しそうな者もいた。見た目は粗暴ながらその内に秘めた優しさや同じような境遇に勝手な仲間意識を抱いているものの、いまだ果たせない無惨を倒すのは、あのような才能溢れる人物なのだろうと思われた。いや期待せずにもいられなかった。 同期に負けてはいられない。そんな嫉妬に近い憧れのもと、師事したのは岩柱だった。未熟であるがゆえに相性は分からない。だが、当代の岩柱の修行やそのひととなりに救われる部分も多かった。 全集中が

        • タイトル勝負