クラクションは霧の中で 5話
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(睦月三十五歳 朔三十歳 零二十五歳)
最近、嫌な夢をよく見る。その内容は全く覚えていないのだけれど、起きた時の気分は最低で、不愉快で、ただひどく嫌な夢を見た、ということだけ覚えている。
その感触だけがあって具体的な記憶がないというのが気持ち悪く、目を覚ました時にすぐにメモをとろうと試みたことがある。目が覚めた瞬間の夢の記憶はまだ鮮明だった。私は忘却の波に追いつかれないよう必死で、ひたすら手元のノートにペンを走らせた。「何よりも大切なのは、」そこまで書い