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散文「巻頭言──シヲ」

 6名の詩人による言窓の会が結成され、詩誌『シヲ』を発刊する運びとなった。元を辿れば同じ大学に縁ある人の集いである。もちろん、詩誌を発行する意義はそのことに留まらない。
 誌名『シヲ』は詩を書き、詩を読み、詩を批評し、詩を楽しむなどなど、あらゆる観点から詩をフォーカスしようという気概をもつ。
 一方で会名「言窓の会」は、幻想に意識を罹きつつ、言葉という窓を通して詩への態度を読者へ示す。私たちの嵌めこんだ言葉の窓は、読者をひと時の幻想へと誘うだろう。詩の視せるヴィションの様々は単なるフィクションではなく現実に繋がっている。幻想はただの夢に留まらず、読者がいる現実から窓の向こうを覗くとき、詩は現実に新しい事実を照射する装置としての側面を見せる。
 だから、詩は書かれる。
 詩は現実の見えざる面を照射する──そう信じている。
 なにより読者に読んでもらわなければ、窓のあちらとこちらはアクセスすることは叶わないのだから。本詩誌においても、現実にアクセスして、読者の心根に残る詩篇が揃うことを確信している。本詩会は今年限定の活動予定であるが、どうかよろしくお付き合い願いたく、巻頭言とする。


初出
詩誌『シヲ vol.1』(言窓の会・2017年7月8日発行)に寄せた巻頭言。

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