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散文「子どもに紹介する本を選ぶ――ブック・トークを想定して」

※ 大学3年次のレポート。

 私は、「小学六年生に詩を楽しんでもらう」ということをテーマとした。当初は、中学二年生を想定していたが、本の内容を踏まえて考えたところ、小学生高学年なら理解し楽しんでもらえるだろうと考え、対象年齢を少し下げた。
 選択したのは以下の五冊。タイトル昇順に記す。

①原爆詩人峠三吉
増岡敏和著 新日本出版社 1985 218p 18cm
②子どもがつくるのはらうた. 1
工藤直子編著 童話屋 2006 169p 19cm
③詩ってなんだろう
谷川俊太郎著 筑摩書房 2007 191p 15cm
④バイバイまたね
銀色夏生著 角川書店 2001 15cm
⑤みえる詩あそぶ詩きこえる詩
はせみつこ編 飯野和好絵 富山房 1997 167p 23cm

 ブックトークの詳細な流れまでは考慮していないけれど、

⑤ → ③ → ② → ① → ④

という順番で、紹介するのがいいのではないだろうか、と考えている。
 ⑤に示した『みえる詩あそぶ詩きこえる詩』は小学生全体を対象としているように感じる。イラストが入っていて文字も大きいため非常に読みやすい一方で、現代詩人のみならず、北原白秋や萩原朔太郎、室生犀星、中原中也らの近代詩人も掲載されており、高学年の生徒達が読んでも遜色ない書籍であるだろう。私はまず、この書籍を紹介することで、子どもたちに詩が「変なもの」と感じてもらいたいと願っている。多くの詩が平仮名で(しかも簡易な言葉で)書かれているはずなのに、「これはどういう意味があるの?」と聞いてみれば、恐らく子どもたちは答えに窮するかと思う。平仮名の簡単な言葉が理解できない「変てこさ」によって、子どもたちの頭の上にクエスチョンマークを浮かべてもらうことが興味の第一歩になるかと考えている。
 ③に紹介した『詩ってなんだろう』は現代詩人の巨人・谷川俊太郎が詩の仲間を集めたアンソロジー本である。ここで私は「あらゆる言葉は詩になりうる」ということと「詩は笑える」ということを伝えたい。擬音の詩を紹介している「おとまねことばの詩」や「アクロスティック」の項などは楽しく読んでもらえると思う。そのような中でも最も紹介したい項は「いろんな詩を読んでみよう」の部分である。ルナール(岸田国士訳)の詩を引用してみる。

  蛇     岸田国士

  長すぎる。

 これも詩なんだよ、といえば生徒は驚いてくれるのではないか。また、「こんなのなら自分だって書けるよ!」と言い出してくれる子どもたちが出てくれれば私としては嬉しい。
 次に、②の『子どもがつくるのはらうた. 1』を紹介するとともに私は子どもたちに詩を書いてもらいたいと思っている。この書籍は朝日小学生新聞と童話屋が主催した「みんなの『のはらうた』大賞」から出た優秀な作品を編纂したものである。このことを紹介して、自分たちと同じ、またはそれより下の学年の子どもが素晴らしい詩を書いていることを伝えたい。そして、自分でも詩を書いてみることをお薦めしたいのである。
 以上の三冊で流れを一度切って、四冊目の『原爆詩人峠三吉』では「詩は社会にも影響を与えていた」ことを伝えたいと思う。この書籍は原爆反対を詩で訴えた広島の詩人・峠三吉の生涯を描いた評伝である。少し内容が難しいけれど、社会の歴史に興味がある子どもにこの本は紹介してあげたい。六年生ならば社会の勉強もあるので戦争・原爆のことについて一通りの知識はあると思うので、詩と社会に関連があり、何も楽しいだけで詩は何の役にも立たないと思われないようにしたい。
 最後の一冊は人気詩人の銀色夏生の『バイバイ またね』という詩集。短い詩がたくさん詰まった詩集でありながら、全編オールカラーの写真集としても読めるこの一冊は女子学生に詩の入門編のような感じで紹介したい。一冊目で紹介したように、詩はイラストや写真と一緒になっていても面白いのだ、ということを伝えてあげたい。銀色夏生は恋愛の詩が多いので女子学生向きだなと考えている。

 以上の五冊をこのような手順で紹介したいと思っている。このブック・トークの目的は「詩は楽しい・書けるかも・社会のためにもなる」といったような項目で一つでもそれを感じ取れれば私は嬉しく思う。

BOOK TALK『詩を楽しむ』
(対象:六年生)
~詩の本の紹介・詩を読み、詩を書いてよう!~

 今日はみんなに、詩ってなにかな? ということを考えてもらうために五冊の本を紹介するよ。詩で笑いたい子、詩で恋したい子、詩で勉強したい子、詩が分らない子でも、きっと詩がもっともっと楽しくなるよ!

『みえる詩あそぶ詩きこえる詩』はせみつこ編 飯野和好絵 富山房 1997 167p 23cm
  「いるかいるか/いないかいるか/いないいないいるか/いつならいるか/よるならいるか/またきてみるか……」。これは谷川俊太郎さんの「いるか」っていう詩なんだ。大きな声を出して詩を読んでみたい子にオススメ!

『詩ってなんだろう』谷川俊太郎著 筑摩書房 2007 191p 15cm
  「ながすぎる」。この一言ってなんだと思う? これはルナールさんという詩人が書いた「蛇」という詩です。たったの一言の詩だってあるんだ。でもとっても長い詩だってある。じゃあ、詩ってなんだろう? 詩ってなんなのか、いまいち分らない子にオススメ!

『子どもがつくるのはらうた. 1』工藤直子編著 童話屋 2006 169p 19cm
  みんなは「おう なつだぜ」と歌う“かまきりりゅうじ”を覚えているか? そんなかまきりりゅうじが住んでいる“のはら”に全国の小学生たちが仲間を加えてくれたよ。この本に書いてある詩は、どれもこれも君たちみたいな小学生が書いた詩ばかり。この本を読めば、自分でも詩が書きたくなる!? 詩を書いてみたいという子にオススメ!

『原爆詩人峠(とうげ)三吉(さんきち)』増岡敏和著 新日本出版社 1985 218p 18cm
  「詩って何の役に立つの?」なんて思ってる子はいるかな? 詩は戦争の時代、大きな意味を持っていたんだ。もちろん、いまの詩にも大切な役割があるけれど、紹介した本は峠三吉さんという詩人の生涯を書いた本なんだ。詩の役割が気になる子にオススメ!

『バイバイまたね』銀色夏生(ぎんいろなつお)著 角川書店 2001 15cm
みんな好きな子はいるかな? 人が好きって気持ちと詩はとても深い関係にあるんだ。それを素直に書いた詩人が銀色夏生さん。恋する子に読んでもらいたいオススメの本なんだ!

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