散文「配信を振り返って」
二〇二〇年一月から主催を引き継いで定例開催しているイベント「ポエトリーリーディングオープンマイクSPIRIT」がある。一年半程ご多分に漏れずコロナ禍の影響により断続的に開催中止を余儀なくされている。
そんな中で断続的に個人的な配信を行なうようになった。動画サイトYoutubeで私の名前で検索すると過去の配信を観ることができる。これらの配信は個人的なものだが内容は人々と関われるものを続けてきた。
第1回が「ダイドク」。募った詩を私が代わりに朗読するという内容だ。詩の朗読ができるネット上のオープンマイクはこの1年で信じられないほど増えた(コロナ禍の数少ない恩恵というべきか)。その中で私が行なったことは他人になりきって詩を代読するオープンマイクだ。ここには、実際にオープンマイクに参加されたことがない方からも募集があって、企画のやりがいを実感できた。
第2回は「シ的実験・増幅」と題して、お題をチャット欄にどんどん投げてもらい詩を即興的に膨張・展開させた。十五個ほどのお題を消化し、夢物語のような不思議な詩を楽しんでいただいた。
第3回は「御返詩(おんがえし)」と題して、募った詩に私は返詩を書いて、その両方を朗読した。6名の方から詩をいただき、それらの詩の要素や形式に対して6編の詩を書いた。自らの経験だけでは予測できなかった詩が生まれる貴重な機会となった。
多くの人を同時に巻き込んで詩を楽しめる場が作れるのは素晴らしいことで、SPIRITで為したいのは、そういうことだ。私も時折その渦中にて豊かな時間を過ごす。
しかし私の配信に限ってはたった一人から色んな人への繋がりを試みてきた。それが性に合っていたし自分の為せる小さなことだと思った。無理な背伸びはせず日々の生活や心身に相談しながら続けられること。長い息をもって詩を続けたいと願う私なりの処世術なのかも知れない。