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君に会える春がやってくる

明日春が来たら君に会いに行こう。

大好きな冬が終わっていく。
湿気がなくてすがすがしくて、張り詰めた冷たい空気。キラキラ輝くイルミネーション。クリスマスに代表されるたくさんの楽しいイベント。汚いものをすべて浄化してくれるような白く美しい雪。おいしい牡蠣。そんな好きなところが盛りだくさんの冬だけれど、苦手なところがひとつだけある。

人びとの服が暗すぎること。

会社の始業時間が遅めなこともあって、普段わたしは通勤時間帯の電車に乗ることはほとんどない。だがある日、何か用事があって9時少し前の電車に乗ることがあった。ホームに滑り込んできた電車の扉が開いた瞬間、そのなかの色彩のなさに「え、なにこれ暗い」とギョッとしてしまった。

夏であればシャツの白さがある分あんなにも暗さを感じることはなかっただろうけれども、みんながほとんど黒に近いダークグレーやネイビーのコートを着ていて本当に暗かった。暗い色ということも相まってもはやなんだか怖かった。

普段乗る電車は、いわゆる会社勤めの人があまりいない時間帯であるためかあまりそこにいる全員が黒っぽい服を着ている違和感のようなものを感じることがなく、余計にとても強烈な体験として心に残っている。

もちろん、みんな好きな服の色を着ればいいと思う。でも、個人的には明るい色が好きなのであんなに黒のような色を着た人ばかりになるところは苦手だなあと思うわけである。どうせなら白一色の方が全然いい。

そんなモヤモヤにもならないレベルの小さな引っかかりを感じながら過ごしているうちに、気づけば冬の寒さもゆるみ、春の気配がし始めた。

花が咲き乱れ、人々の服の色が明るくなり、街に色が溢れて華やぐ春。そんな春の足音が近づいたころ、いつも君に会いたくなる。

はじめての一人暮らしと誰も知り合いがいない環境への期待と不安を抱えながら向かった、大学の入学式。デビューしてほしくて、夢を叶えてほしくて、ずっと応援をしていた推しのデビュー記念握手会。友達とお花よりもお酒と食べ物とおしゃべりに夢中になったお花見。就活を前にして髪の毛を暗くした日。社会人になる実感がピンとこないまま向かった初出勤。どんな時も一緒にいて、わたしを包んでくれた君。

君に会うために買った、花柄のワンピースにパステルカラーのハイヒールと明るい黄色のバッグ。君に会う準備は完璧だ。全部全部、かわいいピンク色をした君にぴったり。最強の君ならば、このアイテム全部をわたしごと包んで、最高に可愛く見せてくれるはず。君と過ごす春が今年も楽しみだ。

そうだ、明日春が来たら君に会いに行こう。

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