なんかポエムみたいなやつ
しょっぱいような、それでいて儚いような、潮の香りが鼻をくすぐる。
海沿い。港近くの水族館。
暗いけど、陽キャがいっぱい居るせいなのか、とても眩く見えてくるのはこの世で私一人なんじゃないかと思ってしまう。だってそもそも水族館は暗い雰囲気と美しい魚を見る場所だから。自分から行きたいといったのに、緊張か、それとも相手を気にしているのか、いまいち落ち着かず、本気で楽しめていない。ここで他の客(陽キャ)を恨むのは何かが違うから、根っからの陰キャである自分と、緊張してしまう私の弱い心を恨むしかないだろう。
サンゴ礁に、イルカショー、シャチの公開トレーニング、ペンギン。みんな美しくて可愛かったけど、この夢が醒めてしまうとどうなるんだろう、という不安だけが過ぎっている。やっぱり、きっと全部この雰囲気の所為だ。
車に入り、行きの残ったぶどうジュースを飲み干す。9月に入ったとはいえ、まだ残暑がとても残っているため、入ったばかりの車は蒸し暑い。クーラーボックスに入っていた保冷剤で首筋の脈を冷やす。水族館の中ではあんなに不安定な感情を抱いていたくせに、ついに終わったとなると、急に虚しいような、寂しいような感情に駆られてしまう自分は改めて臆病だなと思う。いつもとは違う風景。閉じた車窓から見える夕日は、何故か特別なものになっていたように思う。