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プロ経営者とは

プロ経営者という言葉は日本でも大分浸透してきた印象がある。

一般的に経営者は日本企業であれば内部昇格というのが年功序列型のシステムがメインであったが、欧米のようにジョブ型の雇用が浸透してきている背景もあり、日本国内の大企業でもCXOクラスにプロフェッショナルファームや他の大企業の要職を務めた人物を起用するケースがよく見られるようになってきた。また、ファンド投資先のマネジメントクラスでプロ経営者を起用するケースは非常に多い。


プロ経営者とPEファンド

プロ経営者とPEファンドのつながりは密接である。欧米ではプロ経営者のジョブマーケットの流動性が高く色々なファンドの投資先のCXOや社長を歴任しエグジット時にエグジットボーナスをもらったり、投資先のリターンに応じてマネジメントパッケージにある報酬を手にすることができ魅力的なキャリアになっている。

もちろん投資先の業績を伸ばせなければ解雇されてしまうので決して楽な仕事ではないが、筆者が過去に観測した事例では外資系ファンドの投資先がある会社をエグジットする際にエグジットボーナスを一定数のCXOに付与→そこまで長くない人気の間に多額の報酬を得ているケースもある。

PEファンドは投資時に買収前の経営陣をそのまま続投するというよりは、外部からプロ人材や経営者を起用して伸ばすというアプローチをとることもある。

特に欧米のPEファンドの投資先ではその傾向が顕著で、ある企業の海外子会社を売却し現地経営陣をある程度維持すると思いきや、新株主がファンドになった瞬間に既存の経営者は解雇(もちろんパッケージは与えていると思うが)、すべて新経営陣に差し替えということもある。

*PEファンドの投資チームはA社を買収したいが買収後のマネジメント/人材リソースがあるかどうかは大事な点になる。特に投資後のバリューアップで” Assign new management” and “ implement value-creation initiatives”といったアングルも明確に投資メモに記載する場合も散見される。

プロ経営者の採用

自身で起業したいという人も多い中でサラリーマンの範疇にとどまらない、ある種傭兵的なスタンスでプロ経営者のキャリアを積むということのも選択肢になる。

日本でも投資先のCXOクラスを募集している求人は多いが、実際に株主のファンドが起用した経営者をどのような報酬や期待値を持っているかは事前に確認しておくべきである。また当然株主になるファンドの投資担当者との人間的なフィット感も最重要である。

例えばマーケティングやセールスに強い方はChief Marketing Officer (CMO), オペレーションの改善に自信がある人はChief Operating Officer(COO)として、財務バックグラウンドの人であればCFOとしてファンド投資先で実績を上げることでキャリアを積むこともできる。

投資チームはCFO/COO/CEO/CTOなど、過去にどのような会社でどのようなポジションにあったか、投資チームとのフィット感はあるか、候補者の得意分野は投資先企業とマッチしているかを吟味しながら採用することになる。(もちろんファンドの投資チームの人材エージェントと定期的にコンタクトを取って採用したい人物を探しているケースも多い)

プロ経営者の処遇

処遇の仕方としては単純にベースサラリーのみならずインセンティブを付す場合が一般的である。インセンティブ以外にも再投資 (Management Rollover)を付与することもありうる。

例えばPEファンドのエグジット時にMOICが一定の数値(例えば2x)を超えた場合、キャピタルゲイン(売却額から投資額を引いた差額)に一定のパーセントを乗じた数値をインセンティブとして支払う等があり得る。

他にもエグジットに伴うDDやマネプレに協力してくれたという点を勘案し、一定の金額をインセンティブとして付与することもある。
*M&Aの実務では売却される対象会社のBSからボーナスがキャッシュアウトする場合、デットライクアイテムとしてカウントしないといけないので留意する必要がある。

ファンドの投資候補先の企業の経営陣/株主がすでにプロ経営者であれば、彼らに再投資させる等のストラクチャーを組むことで一連托生となってもらい会社業績と個人の報酬を連動させることも一考である。
(再投資した持分に対応する企業価値がエグジット時に投資時より増えていれば、再投資した経営陣はエグジット時にキャピタルゲインを得ることができる)

プロ経営者のメリット/デメリット


プロ経営者のメリットは事業会社で勤務するよりも経済的なアップサイドが大きい点、ファンドの投資先でCXOクラスで結果を出したということは非常に高く評価されるので転職時も困らない(もちろん独立して経営者となっても)、というキャリア上のメリットである。

プロ経営者のバックグラウンドは特定の業界で勤め上げた人もほか、コンサルティングファームや投資銀行等を経て事業会社でCXOのポジションに一旦つき、その後プロ経営者ポジションで転々とするというケースも多い。
株主のファンドが何を考えているか理解できるという点ではこうしたプロフェッショナルファーム出身のプロ経営者は重宝される。

デメリットとしては就任した企業でうまく業績を伸ばせなかった、あまりパフォームしなかった等の噂が立ってしまうリスクである。
これはどのような職種でもありうるが、ファンド投資先でCXOで雇用される場合はある種雇われ社長になるので、レピュテーションリスクはある程度覚悟する必要はある。


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