33日目〜涙が止まらない日〜
なぜだろう、今日はものすごく悲しい。
娘の保育園が再開して、やっと一人になれるって嬉しかったはずなのに。
やっぱり一人でいると色々考えてしまう。
自転車を漕いでいたら急に涙が溢れてきた。
次から次へと息子への思いが止まらなくなる。
息子の声を聞いてみたかった。
もっと一緒にいたかった。
ちゃんと育ててあげたかった。
死産してから
自分の気持ちに蓋をしないと決めた。
その時感じた気持ちから目を背けてしまったら
後から気持ちが折れてしまうんじゃないかと思ったからだ。
こんな風に悲しくてたまらない日が
来る事はわかっていた。
それでも、やっぱり辛い。
悲しみで一歩も動けないような気持ちだ。
これからも発作のように
突然悲しみがやってくるのだろうか。
一度だけ、パニック発作を起こしたことがある。
残業中、電話越しにお客様にひどく怒鳴られ、なんとか話を終わらせて電話を切り、上司に報告している最中のことだった。
肌寒い秋の終わりなのに汗が止まらなくなり
目の前が霞んで見えなくなった。
倒れそうになったが、何とか椅子に座り、耐えた。
涙が止まらなくなり、先輩が心配して車で家まで送ってくれた。
それまでもクレーム対応は沢山してきたし
それなりに修羅場もくぐってきた。
自分ではメンタルが強いと思っていたから
パニックを起こした自分に驚いた。
もう仕事は出来ないと思った。
怒鳴られる仕事が嫌になったのではなく
(もちろん怒鳴られないに越した事はないけど)
こんな事で心が折れてしまう自分を知ったから。
次の日は休みだったが
上司と一緒に怒鳴られたお客様のところへ訪問した。
対面すると、前夜の電話での印象とは異なり、紳士的で常識的な男性だった。
謝罪と今後の対応について話をし、一息ついたところで奥様がお茶を出して下さった。
「昨日横で電話を聞いていたんですけど、相手が女性だと聞いてこの人に怒ったんですよ。怖い思いをさせてしまってごめんなさいね。」
悪いのはこちらなので怒鳴られても仕方ないと思っていたが、少しだけ救われた思いがした。
結局、仕事を辞める事はなく
今も変わらず働いている。
そのあと念のため病院に行き、薬を処方してもらった。
「薬は飲まなくても良いけど、お守り代わりに持っておいて。」
少しの間、重めのクレーム対応やシビアな交渉の前に飲んでみたが、いつの間にか薬の存在は忘れてしまった。
その後パニック発作を起こした事は一度もない。
弱い自分を知り
その後また立ち直ることができる自分の強さも知ることができた。
パニックと悲しみは違うから
死産の悲しみを知って強くなれるかどうかはわからない。
強くならなくて良いから、こんな悲しみを知りたくなかったとも思う。
それでももし少しでも得られるものがあるとしたら。
人に優しくなれたらいいな、と思う。
今までよりも少しだけ想像力をもって
人に接したい。
今日は涙が止まらないけど
そんな自分も受け止めようと思う。
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