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特別ニーズと教育

題名のまんま。
松村暢隆『アメリカの才能教育―多様な学習ニーズに応える特別支援―』東信堂、2003 年

才能児という学問や芸術、技術、スポーツ、ビジネスといった特殊な分野固 有の技能に卓越性があると判断される子どもに対する、アメリカの特別(特殊)支援教育について。

日本では、特別支援教育といえば、重度の身体障がいを持つ人をはじめ、学習障がいや ADHD、ASD といった発達障がいといった子どもを対象にする特別支援教育のイメージが先行している。(※あくまで一般論として)

しかし、アメリカではそういった子どもたち以外にも、 何かしらに秀でた「才能」を持つ子どもに対し、その「才能」に応じた教育を提供し伸ばすことも、特別支援教育の分類の一つに含まれる。

その理由に、子どもたち一人ひとりに個性があり、その個性を引き出し伸ばすことが教育の目的だという信念のもと、その子のニーズ に応じた教育をすることが「教育機会の平等」という面で、教育的正義や公正さであるとい う考えがあるからだという。

一方で、日本の教育においては、いわゆる「日本人」「日本文化」といわれる同一の文化的伝統を共有する共同体の中で育つため、出発点の時点で児童生徒の「同一性」「均一性」 があることが前提となっている。そして、その前提を以て、誰もが同じことを同じ形式で学ぶ均一・画一的な学校教育が展開されてきた。そのため、特定の個人に何らかの特別な措置を講ずることには極端に消極的で慎重な姿勢がとられてきた。

 特に、「才能児」に関しては、 才能のある子どもは放っておいても自力で何とかなるだろうという、児童生徒や保護者の自己責任とする考えや、エリート教育や英才教育といった、恵まれた家庭や環境の子どもに対する早期教育や追加の優遇といった教育機会の差別化や社会階層の分断を正当化・促進 する意味合いとして捉える傾向があるのではないだろうか。

しかし、才能児は特殊な領域で個性を示す子どもであり、障がいを持つ子どもも含めて、一人一人の才能を最大限伸ばすための、個別のニーズを満たす特別支援教育というアメリカ教育の視点は日本の特別支援教育においても 非常に示唆深いものだと私は思う。

子どもたち一人ひとりに違った個性とニーズがあることを認知し、見極め、 その子に応じた適切な支援を行うこと。誰もが願うことではあるが、それを実施する余裕が現場にないこともまた然り。

まだまだ、日本においては「才能児」に対する適切な環境整備やニーズに対応しようとする姿勢が低いかもしれないが、均一・画一的な教育からはみ出る子どもが増加している現在、従来の学校教育では賄えない多様なニーズがあることは否定できない。再度、才能児教育をふく め、多様なニーズに対応する教育支援に真摯に目を向け、改革していく必要があるだろう。

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