「働き者のアリと怠け者のキリギリス」 vol.46
走るのが早い人と遅い人がいるように、人にはペースというものがあります。個人レースならそれぞれのペースで走れば良いですが、これがチームになるとペース配分を取るのが難しくなります。
サイハテ村にも〝ガンガンやろうぜ〟系の人も〝ゆっくり行こうよ〟系の人もいて、時にそのペースの差によって溝が生まれることがあります。
サイハテ村の早期発展を考え積極的に活動するアクティブ住人は、自分で企画を立てて、使われていない施設や場所に新しいプロダクトを生み出すわけですが、その中で生まれる感情に「自分はこんなに頑張っているんだから、他の住人ももっと頑張ってほしい。」と思うわけです。
その感情は仲間とともに目標に向かって切磋琢磨したいとか、一緒に燃え上がりたいという想いから生まれるのですが、受動的なパッシブ住人からしたら、一つ一つ丁寧に暮らしを味わいたいのに、物事があっという間に過ぎ去ってしまって疲弊してしまうのです。
そうなると、互いに不満が募り、悪化すれば足を引っ張り合うような関係にも発展しかねません。
そこで、月に一度の定例会の際に、互いに物事の見方や取り組み方、スピード感が違うことを認め合い、相手に求めるのではなくそれぞれが自分のペースで取り組めるようにしようと話したこともありました。
お互いの想いを理解することで少しの間は解消したのですが、しばらくするとゆっくり派から「ハイペースの人がいると劣等感を感じる。自分がまるで何もしていないかのように感じる時があり居心地が悪いのでペースを落として欲しい。」という意見が出ました。
これではペースの速い人が速く走って欲しいというのと変わらないので、お互いに歩み寄る必要があるように感じました。
もちろん会話上では、自分の価値観を主張するのは良しとしても、相手に互いの価値観を押し付けないことが大事だ、とはそれぞれに理解はしているのですが、実際行動するのが難しいのです。
自分は自分、相手は相手〝お好きにどうぞ〟と、言っても同じ環境で暮らしているわけですから、不満を感じないようにしようと心がけたり、言葉にしないようにしても態度で出てしまったり、行き場を失ったモヤモヤが残留してしまって、溝がなかなか埋まらないわけです。
こういう場合、それぞれに消化不良を起こしている感情や想いを吐き出せる場を作ることでガス抜きや気分転換にはなるのですが、なぜこのような対立が起こるのか、根本的な原因を理解しない限りずっと付きまといます。
このような対立は、学校、職場などあらゆる組織、地域でも起こっていますが、その根底を考える時に浮かぶのはイソップ童話「アリとキリギリス」のお話です。
有名な童話で、子供の時にほとんどの人が読み聞かせられたと思いますが、あらすじを簡単に説明すると、ある夏の日、キリギリスはバイオリンを奏で歌を歌って過ごしていました。
その一方でアリは来たる冬に備えてせっせと食糧を家に運んでいました。キリギリスは今を謳歌しないでせっせと働くアリを馬鹿にしながら、秋になっても音楽と自由を楽しんでいました。
そして、冬がやってきました。キリギリスは食料を探すものの、雪に覆われ周りには何もありません。お腹がすいて困り果てたキリギリスは、アリに助けを求めます。アリは「夏は歌って過ごしていたのだから、冬は踊って過ごせばどうですか?」と言って、追い返してしまいました。
そしてキリギリスは凍え死んでしまいました。というお話しですが、子供に読み聞かせるには酷すぎる!と、アリは凍えるキリギリスを温かく迎い入れ、次の年からは真面目に働くようになりました。という現代っぽい結末などもあるようです。
とは言え、この童話からは「働かない奴は後で痛い目に合う」「勤勉勤労が大事である」「働かざる者食うべからず」のような教訓を連想するわけですが、なぜこの話が思い浮かぶかと言うと、生産性という概念に縛られすぎているのではと思うからです。
僕たち人類は常に生産性を正義としてきたのではないでしょうか。食糧にしても、音楽にしても生み出そうとする行為は同じですが、量や質の違いによって評価され、役に立たないものしか生み出せない人は、邪魔者のように扱われ最悪死んでも仕方がない、もしくは無能というレッテルを貼られてしまいます。
この世界観というか、プログラムのおかげで人類はここまで発展したと言えるかもしれませんが、僕は〝その先にこそ人類の進化がある〟ように思うのです。
働き者のありと怠け者のキリギリスが共に平和に生きる世界はあり得るのか?そしてそんな世界にはどうすればなるのか、それを僕はサイハテ村で考え続けているのですが、現実の僕らはまだまだ弱く、時に大きな試練として試される時があります。
次回は、vol.47「お好きにどうぞが死んだ日〝最年⻑住人の退村勧告〟」です。フォロー、スキ、シェアしてくれると励みにります!^ ^
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