英語学習に対する姿勢を根本から変えてくれた先生
最近、「誰に教わるかって大事だなぁ」と学んだ。
きっかけは、英語学習である。
中学生のころに学校の授業でつまづいて以来、ずっと苦手意識があった。それでもなんとかできるようになりたくて、大人になってからも、書籍を買ったり実際に外国人と話す機会を設けたりしては挫折する、というのを繰り返していた。
そんな私が、あるYouTubeチャンネルに出会ってからというもの、英語学習を楽しいと感じるようになった。
英語学習の楽しさを教えてくれたのは、ニック・ウィリアムソン先生だ。
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ニック先生は、英会話学校を設立した父と、言語学者の母を持つ言語教育のサラブレッドで、日本へ留学経験もあって日本語がぺらっぺらである。動画の中で、しばしば小粋なジャパニーズジョークも挟んでくる。(「But I~」の発音を「一括払いの"バライ"です」なんて説明したりする)
そんなニック先生の英語の教え方は、「自分が日本語を習得したときの学習法」をベースにしていると言う。
だから非常に実践的で、特に「その言語のネイティブにとって自然な言い回しかどうか」を重視していて、さらに「なぜその言い回しが自然なのか」を丁寧に説明してくれるから、めちゃくちゃ納得感があるのだ。
たとえば下記の動画では、「How old are you?」というフレーズを置き換えて、いろんな表現ができることを解説している。
英語をあまり話せない人でも、「何歳ですか?」という質問が英語で「How old are you?」であることは知っているでしょう。それは、文章を塊として覚えているからです。そういう塊として覚えたフレーズをもとに置き換えて考えると、簡単に自然な英語が話せるんです。
と、教えてくれるのである。(なお上記は筆者の要約であり、ニック先生の言葉そのままではない)
確かに中学生で英語を挫折した私でも、「How old are you?」くらいはパッと出てくる。しかし「自然な英語が話せる」とは具体的にどういうことか、例を挙げよう。
たとえば「How old are you?」の「old」は形容詞だから、同じ形容詞なら何でも置き換えられるのだ。形容詞とはたとえば、hungry(お腹が空いた)とか、late(遅い)とか、そういうのである。
だから、「How hungry are you?」にすれば「どれくらいお腹空いてますか?」になるし、「How late are you?」にすれば、「どれくらい遅れますか?」になる。
さらにさらに、pregnant(妊娠している)という形容詞に置き換えれば、「How pregnant are you?」で「妊娠何ヶ月ですか?」になるのだそうだ。
さきほどの動画の開始5分くらいでこういった話をしているので、興味が湧いた方はぜひ直接ニック先生の言葉で確かめてみてほしい。そこそこ英語ができる人でも学びが多いはずだ。実際、妻がそうだった。
ちなみに私はここまでの解説ですでに、「英語って実はおもしろいのでは……?」と感じ始めていた。この方法なら、ベースとなるフレーズと、置き換えるための単語さえ覚えれば、確実に表現できる内容が増える――そう実感できたからだ。
学生のころに学んだ英語は、それを覚えたところで何ができるようになるのかよく分からないまま、テストのためだけに丸暗記していた。学校のテストはそれでそこそこ点が取れてしまうから、そのまま今まで来てしまった。
しかしその英語では、「どれくらいお腹空いてますか?」という一文すら、自分一人の力では作れない。少なくとも私は作れなかった。無理やり頭をひねればなんとかなったかもしれないが、「How hungry are you?」には絶対に辿り着かなかっただろう。
これについて動画内でニック先生は、
「どれくらいお腹空いてますか?」という日本語からスタートしてしまうと、「どれくらい」は「How much」で、「お腹空いてますか」を「Are you hungry?」にして、「How much are you hungry?」って間違えてしまう人が多いんです。
と説明している。ちなみに、「How much are you hungry?」という表現は存在しない。
ニック先生のすごいところはここである。
ネイティブの英語話者でありながら、日本人がなぜどのように間違えるのかを熟知していて、先回りして教えてくれるのだ。これまで日本人に指導してきた経験に裏打ちされている面もあるだろうが、個人的には、ニック先生自身が日本語に精通しているというのが大きいように感じる。
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そんなわけで私は、ニック先生の動画に出会ったおかげでずいぶん英語に対する姿勢が変わった。今では隙あらば勉強したいと思うし、何なら英語に時間を費やしすぎて仕事がおろそかになりかねないくらいだ。(すでに若干おろそかになりかけている)
ところで、英語学習にハマる前の私は「はっきりした目標がないと勉強は続かない」と思い込んでいた。英語で話したい人がいるとか、仕事で必要だとか、そういう学ばざるを得ない状況に迫られなければ、継続的に勉強するのは絶対に無理だと思っていたのだ。
だから、目標も定まらず、かといって英語を話す必要に迫られる環境に身を投じる勇気もない自分には無理だと、諦めていた。
でも、ぜんぜんそんなことなかったのである。ニック先生の動画に出会ってそれに気づいたとき、うれしさとともに悔しさがこみあげてきた。こんなに楽しいものを私は、中学の英語の授業以来、じつに十数年もの間、つまらなくて苦しいものだと思い込んできたのだ。
ひょっとしたら、学校の先生も根本ではニック先生と同じことを言っていたのかもしれない。でも、少なくとも私には同じようには聞こえなかったし、こんな発想には至らなかった。そして何より楽しいと思えなかった。それが悔しい。
教わる相手次第で、「好き」や「得意」になる可能性のあるものが「嫌い」や「苦手」になることもあるのだ。一方で、すでに「嫌い」や「苦手」になってしまったものも、教わる相手次第では、「好き」や「得意」になるかもしれない。
だから何か学びたい時に探すべきは、効率のいい勉強法とかではなく、自分にとって相性の良い指導者なのかもしれない。そうすれば、いま苦手に感じているものも、実は得意になるのかもしれない。
次はどの「苦手」や「嫌い」を克服してやろうかと、いまからワクワクしている。
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