今日のNetflix 西部戦線異常なし 感想
断っておくが、異常しかありません。(笑)
1914年から続いたドイツとフランスの西部戦
線僅か100mをかけ300万人以上の死者が出た第
一次世界大戦下の戦争。
その戦争をドイツ側の、19歳にしてなんの経
験もないただの学生パウロが国の軍隊に扇動され
志願兵として友達と共に軽いノリで戦地に立って
しまう…という話。
内容は本当にシンプルに戦争映画。
しかし冒頭、違いを見せつけられる。
冒頭、かなりリアルで作り込まれた戦争シーンから始まる。新兵らしい兵士が仲間が撃たれる中遷移の最前線を駆け抜ける。
なるほど彼が主人公か。
なかなか面白そうだと、それだけでも良かったのにも関わらず、場面が切り替わりパウロという青年が志願兵として支給服を受け取るシーン。
あれ、冒頭の青年の子供かな?とパウロを見守る私。
パウロ、支給服を受け取る。受け取ったのは冒頭で主人公かと思われた青年がかつて着ていた服。つまり、冒頭の青年は呆気なく殺されていたのだ。
学生などいくらでも替えのきく道具であると言わんばかりの恐ろしく素晴らしい演出である。ここでもう他の戦争映画との違いをまじまじと見せつけられる。
劇中で派手な戦闘シーンは2度ほど。それ以外は同じ班になったパウロとその同級生の視点と情報量から見た戦争のストーリー。
命懸けで農家から鴨を奪ったり、ナンパしてみたり。
そんな我々と時と時代は違えど何ら変わらない庶民の姿を重ねられなくもないシーンが却ってその先訪れる戦闘とその後の悲惨な結末を増長させている。まるで観客であるはずの私のこの先の未来までをも奪われたかのような絶望感。
そんな戦闘シーンの中でも特にパウロがフランス兵を刺し殺すシーン。
必死で生きるために、何故なのかもわからず本能で殺すパウロ。殺して暫くして我に帰り、まるで仲間が敵に殺されたかのようにその自らが殺めたフランス兵の蘇生措置を行う。
間も無く絶命するフランス兵。胸ポケットにはフランス兵の妻と娘らしき写真。
敵と思っていたフランス兵も自分と同じ思いで、国のためという建前のもとにもはや目的を見失い戦地に立っていたと知らされるなんとも残酷なシーンである。映像の作り込みの深さと心理的にも重くのしかかるものがありかなり印象的なシーンである。
とにかくこれは映像表現としてこの上なく素晴らしい。それだけでなく一般兵にフォーカスしたからこそ我々でも突き放されることなく物語に没入できる素晴らしい作品である。