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マーティン・セリグマン博士のkeynote speechへ行ってきました

1月19日、私が在籍する大学の心理学部門が主催したマーティン・セリグマン博士(Dr. Martin E.P Seligman)のkeynote講演を聴くことができました。リアル講演で!コースが正式に始まる前というタイミングで、いきなりこのようなチャンスを与えられるとは、大変ありがたいです。しかも、博士自身、対面での講演はCOVID19後初、3年ぶりということで、本当に貴重な体験となりました。

セリグマン博士は、ポジティブ心理学の産みの親です。精神疾患を対象とする臨床での心理学(Psychology as usual)で偉大な功績を挙げるも、一人の人間がよりよく生きるためには、マイナス状態からの回復だけでなく、一人一人が持つよりよく生きることにつながるポテンシャルや強みを引き出すこと、また健常者が生涯を通じてよりよく生きるためのアプローチが必要だと感じ、米国心理学会会長であった1999年にポジティブ心理学を提唱しました。

このアプローチの転換は、From Languishing to Flourishing(苦しみから繁栄へ)と言われます。そして、博士は、一人一人が強みを活かして、持続的なWell-Beingを構築することを"Flourish"と呼び、この20年余り、仲間たちと共に、誰もがアクセスできる研究や介入方法を世に送り続けながらこの分野を牽引し続けています。

そして、今回のテーマは"Well-Being in a Post COVID World"でした。

まず、冒頭、講演を行っていなかったこの3年の間に、エド・ディーナー博士やミハイ・チクセントミハイ博士ら大切な同志6名がこの世を去ったこという悲しいお知らせから始まりました。
そこから予定時間を大幅に超える熱弁には、まだ生まれて20年余りという学問に対して、この3年で世界中に起こった様々な変動の中でより強さを増したと思われる博士の信念が通底していました。

そのような中で、私の心に強く残ったのは、何度も言葉としても出てきた"Agency"、そして"Agency Spurs Progress"というフレーズです。

"Agency"というのは、ものごとを動かす主体ですね。
博士は、Efficacy(自己効力感)やOptimism(楽観性)、Imagination(想像性)は、人々が困難を乗り越えFlourishになるためのAgencyだと信じている、と語っていました。

また、今、非常に先の見えづらい不透明な時代ですよね。
そんな中にあって、過去の世界の歴史を紐解きながら、苦難の時代を乗り越え前進し続けてきた"Agency(世界史上の人物)"を取り上げ、今こそ、より人々のチカラが世の中の“Agency”になる時代なんだ(More Human Agency)ということ、長いスパンでみれば(1800年~現在)今は決して悪い時代ではない、ということを語りました。

実は、博士の講演の前に、奥様のマンディ・セリグマン氏(ファインアート・フォトグラファー)から、写真を通したSeeing Happy Projectという活動の紹介があり、レンズを通して自身を、世の中を見つめることとポジティブ心理学の知見との重なり、写真という媒介の持つチカラについて語っています。

ですから、博士は、言葉ではないArtのチカラというものも、今の時代に再度注目されているAgencyの一つに挙げています。Well-Being Artという言葉を使っていました。

そして、最後は、14世紀ヨーロッパ、黒死病のパンデミック時代、大病を患った際に見た幻視体験から隠修女となり、訪れる人々が前進する助言を与え続けたと言われる、ノリッジのジュリアンというイングランドの神学者のクォートを引用し、講演はスタンディングオーベーションで終わりました。

“All shall be well, and all shall be well and all manner of thing shall be well.”
― Julian of Norwich
(すべてはよくなる、すべてはよくなる、すべてのものごとはよくなる)

これだけを切り取ると、サイエンスをベースにしているポジティブ心理学なのに??と思われるかもしれませんが。

博士はこれまでに科学的裏付けに基づくリサーチ手法や介入法をたくさん研究しています。今回は、既に世の中に知れ渡っているものではない、もっと大きな視点≒Post COVID Worldに対するポジティブ心理学の可能性、そして未来への提言的な内容でした。

リアルでの講演でしたが、倍速分くらいの内容量で、正直すべてキャッチアップできていませんし、ヨーロッパの歴史や哲学に紐づく内容だったので、知らないことだらけでした。が、今の私なりに解釈をし、心に響いて残っていることを記録してみました!

ということで、余談ですが、自分の無知に気づき、早速イギリスに居るのだからまずはヨーロッパの歴史を知らねば、と、大英博物館へ行った次第です。タイトルの背景にあるのは、そこで出会った小さなブロンズ像、ローマ時代に家族のWell-Beingを守ったとされるLarという小さな神様です(右上に手を広げて居ます~)。5cmほどの小ささですが、私の目に留まってくれました。






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