#EMONism 24
羽黒蜻蛉の飛び交うあの庭を想い出した。8月も盛り、夏休みに見つけたあの平屋の廃墟。太陽は真っ直ぐ光を放ちあんなにジリジリと暑かったのに、あの庭は恐ろしいくらいにひんやりとしていたっけ。それも、手入れをされず自由を得た木々が嬉々として庭を覆い尽くしていたからに他ならないが。
その様なものだから、木漏れ日も美しく、それによって光と影のグラデーションというかコントラストというか、余計に幻想的というか、神秘的というか、子供ながらにまったくの異世界に来たような感覚に陥った事を今でも憶えている。
羽黒蜻蛉はとてもか細くか弱い。捕らえるなんていとも簡単だった。
だけど私はそのあまりのか弱さにドキッとした。この命は私の匙加減、裁量に委ねられているのかと思ってゾッとした。
あれ以来二度と捕まえることは無くなった程、とても印象に残っている。
あの庭は一体何処だったか。もはやもうこの世界にあの庭は存在していないのかも知れない。
やはりあの庭はこの世界に通ずる異世界の入り口だったのかも知れない。そんなふうに思う。
実際今大人になってしまった言葉に綴りかえられているが、あの頃の私が感じていたあの夏のあの庭はもっと違った筈だ。あの頃の私と話がしたいと素直にそう思う。
それほどまでに美しかったし、恐ろしかったのだ。あの庭は。
※自身過去ツイートより転載。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?