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恥の多い人生とは

『恥の多い人生を送ってきました』
太宰治の人間失格にはこの言葉がある。

ある時、この言葉を目にした時に
私のこの恥の多い人生の備忘録を書こうと、ふと思った。

私には3人の兄弟がいる。
3人共父親が違うという、この時点で何ともクレイジーな匂いがする家にいた。

私の記憶のある時点では、すでに私の父親は他界しており母との二人暮らしであった。
父方の親戚は裕福な家庭で、貧乏な家庭で育ってきた母親をよくいびっていたのが記憶にある。
いわゆる嫁姑問題だ。

母が19歳の時に姉を出産し、その後すぐに離婚。
田舎から出てきたばかりの母には子を守っていく術もなく、姉父に親権が行った。
その後すぐに姉父が他界し、親戚間をたらい回しにされていたそうだ。
最後に姉を引き取った老夫婦も、児童施設に預けていた。

私が小学校低学年の時に母は姉の親権を取り戻し、嫁姑問題からも離脱して、私と姉と母の3人暮らしになった。
やっと家族としての遅いスタートを切った私達3人の間には、何ともよそよそしい感じが漂っていて、家族の形としては大変未熟だった。

私は何となく家の中の不穏な空気を感じてはいたが、急にできた6つ上のお姉ちゃんに喜びを感じていて、一人のほほんとしていた。
それもそうだ、まだ小学校低学年だ。
当たり前の幼さだ。

姉は急にできた妹に戸惑いを感じていたそうだ。
それと同時に、この子だけ母親の元でぬくぬく育ちやがってと怒りも覚えていたそうだ。
この話は、つい最近聞いた話で大人になった私はようやく当時の姉の心情が理解できた。

何やかんやで未熟な家族を続けていた私達だが、
ある日母親が再婚をすると言いだした。
相手は高身長で高収入な公務員の男だった。

私はそれまで大人の男性とあまり接してきた事がなかったので、警戒心MAXで初対面を迎えていたが、2、3回会う内にその男にすっかり懐いていた。
姉はというと、反抗期真っ只中だったので懐くこともなく外の世界へと出て行っていた。
そしてそのまま帰ってくることはなく、当時付き合っていたのであろう男の家に転がり込んでいた。

かくして、私と母と男の生活がスタートした。
今までの生活とは比べ物にならない程生活は豊かになり、習い事を始めてみたりペットを飼ってみたりと暮らしていた。
当時からそこそこ順応性に優れているのだと自負している。

そんな生活の中、私に弟ができた。
10歳離れた初めての男兄弟ができると知り、それはそれは喜んでいた。
母のお腹がどんどん大きくなっていき、そろそろ出てくる頃かもしれないというタイミングで、母は出産の準備の為、病院に入院し始めた。

確かその時は夏休みの間で、朝起きて支度をしてすぐに病院に行き、母と話をして家に帰るという日常を過ごしていた。
まだ見ぬ弟にウキウキしていたし、母親の妊婦姿を見て、女というものはこんなにも強くたくましいのかと子供ながらに思っていた。

家には私と男の二人であったが、仕事が忙しいらしく中々家で会うことはなかったし、私が夜に喉が渇いて起きてきても、自室でひたすらゲームをしていた記憶しかなかった。
思春期に突入していた私にはその距離感が居心地良かったのだ。

そんな日々のある夜、私は乱暴された。

男は前触れもなく、私の部屋に入って来て、前触れもなくソレをし始めた。

当時の私は何が起こったのかも、何をされたのかも理解できていたが、只々驚いていた。

今までそんな素振り一度もなかったし、当時はきちんと新しい父親として思っていた。
何で?どうして?という気持ちから、今後どうしていこうという考えに変わって行った。
順応性が変なところで発揮されている。

あと数週間で待望の弟が生まれるのだ。辛く苦しい妊婦生活を終え子育てという戦場に突入する母親が帰ってくるのだ。
私はその男にされた行為をとてもじゃないけど言えなかった。

その後、無事に弟は生まれ母親も家に帰っていた。

だけれど、この場所は新しい家族を迎え入れるにはあまりにも汚すぎる家だ。

そう感じた時から部屋から出ることもできず、体調も精神もボロボロになって行った。
そんな状況を不審に思わないわけもなく、母親にどうしたのか?何があったのか?と聞かれた時に、強くならねばと決心した心は簡単に折れて、全てを話した。

そこからはトントン拍子に、全てを捨てて私と母と弟の3人暮らしになった。
何だか昔もこんな感じだったなあーと振り出しに戻ったのを実感していた。

そこから少しずつ家族の形も変わっていき、
私は、自暴自棄になり身売りに走ったりして今は何とか真っ当に見えるような欠損した人生を送っている。
姉は3人の子供を産み、一回り上の優しそうな旦那さんと幸せに暮らしている。
弟は過去の話は何も知らず、すくすく育って行っている。
母は結局、女なのだなぁという感じの人生で、子育て卒業後のセカンドステージの準備をしている。

私と母と姉と弟の4人家族は、他所から見ればとても歪な家族の形だろう。
何とも恥の多い人生だと思う。

人生の中で自分の本性を見抜いてくれる友人や、
心中しようと思えるほどの相手や、自分の魅力を好いてくれる人達に出会えた事を幸せだと感じる私は、それもそれでまた、味のある人生を送ってきたと思う。

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