なぜ虐待は連鎖するのか虐待サバイバーが考えてみた
こんにちは!
ヨガインストラクターのemuです。
タイトルにもある通り、実は虐待サバイバーです。
赤ちゃんの時に身体的虐待、その後は母親から引き離されたものの、慢性的なネグレクト状態でした。
さて、そんな虐待サバイバーを苦しめる呪いのひとつに
「虐待は連鎖する」
という言葉があります。
自身も子供を持つ時に、少し恐怖を感じました。
もし、自分も母親のように虐待をしたらどうしよう。愛せなかったらどうしよう。
いや、そんな事は絶対しない!
でも、わからない…。
そんな葛藤を抱えておりました。
幸い、いろんな環境に恵まれて虐待をすることには至っておりません。周りの環境に感謝です。
でも、確かに虐待を受けていた人が虐待をしてしまうこともあります。
それは何故なんでしょうか。
幸も不幸も連鎖する
まず、生まれて間もない赤ちゃんがいたとします。赤ちゃんは純粋無垢で、どんな色にも染まることのできる存在です。
例えるなら、何も入っていないただの箱です。
このただの箱に誰かが「大切なモノ」をしまうとします。するとこの箱は「大切なモノをしまう箱」になります。
一方で、このただの箱に誰かが「ゴミ」を入れるとします。するとこの箱は「ゴミ箱」になってしまいます。
大切なモノをしまう箱の中にゴミは入れませんから、どんどん大切なモノが入ってきます。
ただの箱だったこの箱も、すっかり自分は「大切なモノをしまう箱」だと認識するでしょう。
もしここにゴミがはいってきたら、違和感に気付いてすぐに外に出すことができます。
では、ゴミ箱になってしまった箱には、どんどんゴミが捨てられてしまいます。
ただの箱だったこの箱も、すっかり自分は「ゴミ箱」なんだと認識してしまい、どんどんゴミを受け入れてしまいます。
このようにして幸も不幸も、
どちらもどんどん連鎖して
幸せには幸せが、不幸には不幸がはいってきます。
でも、当たり前ですが誰だって幸せになりたいのです。
一度「ゴミ箱」として使われた箱だって、
「大切なモノをしまう箱」になりたいのです。
その時にやってしまいがちなのが、
自分の中に溜まってしまっているゴミを、丁寧に自分の中に隠すことで問題を解決しようとすることです。
自分の中にあるあまりにも強い情動を無視することは、止まらない日常をやり過ごすのに、とても役に立ちます。
しかし、自分の中に溜まっているゴミを、ギューっと奥の方に追いやって無視することは
実は大切にしまい込んでいるのと同じなのです。
ここに「大切なモノ」をしまおうとすると、箱の中にはゴミがありますから、なんだかとても居心地の悪さを感じるでしょう。
これが言わば「生きづらさ」に当たります。
トラウマサバイバーは、この生きづらさを抱えながらも、それでも止まらない日常(学校や仕事、家事、育児、その他人間関係)をどうにか送るために、葛藤しながら過ごしています。
これにはとてもエネルギーが必要で、トラウマサバイバーは毎日ただ普通に過ごすだけで、ひどく疲れてしまうのです。
虐待の連鎖はしまい込んだ情動が原因
ギューっと奥の方に追いやって忘れ去られたゴミと大切なモノが箱の中に混在していると、どうなるのでしょうか。
脅威から闘うまたは逃げるという本能的な反応は「闘争/逃走反応」といい、サイレンのような役割をしています。
サイレンが鳴った時に逃げるか闘うことができたら、サイレンは鳴り止み日常を取り戻せます。
しかし脅威から「逃げることも闘うこともできない」と、本能的反応の最終手段である「凍結/虚脱反応」に切り替わります。
これは恐怖や怒りなどの情動を解離させて、なるべくエネルギーをつかわないようにやり過ごすという、言わば「死んだふり」です。
なるべく自分をなかったことにして、ひっそりと息をするようにすることで何とか生き延びようとします。やる気がなくなり、自分のことも他人のこともどうでもよくなります。
忘れてはいけないのは
この状態になってもサイレンは鳴り響いているということです。
トラウマサバイバーは、忘れ去れた過去の体験の記憶や情動をなるべく遠ざけるように、サイレンが鳴り響いてる身体で耳栓をしてやり過ごしています。
これは本能による脳の働きで全くの無自覚なので、自分ではなかなか気づくことができません。
しかし、この耳栓には限界があります。
閉じ込めていた情動を思い出させるようなもの(トリガー)に出会うと脅威を感じとり、
逃げろーーー!!
闘えーーーー!!
と脳はサイレンをいっそう大きくならします。
この時に耳栓が外れ、過去の脅威に対しての闘争/逃走反応が出てしまうのです。
身体的虐待の場合、親は子供側に何かしらの理由をつけて攻撃してきます。
例えば、泣き声がうるさいとか、コップを落としたとか、トイレに失敗したとか
子供なら当たり前の失敗や甘えや弱さが原因となることが多いです。
子供は基本的に親のことが大好きなようにプログラムされてますから、こんな事をされたら悲しくて辛いでしょう。
そしてもう二度と悲しいことが起こらないように、失敗する自分や甘えたい自分、弱い自分を大嫌いになって「完璧ないいこ」になろうとします。
つまり、トリガーとなるのはその時に受けた暴言や暴力、光景だけでなく、失敗した当時の弱い自分もトリガーとなるのです。
子育てをしていると、子供の失敗なんて日常茶飯事です。
虐待の連鎖が起こってしまうのは、環境が悪いということもありますが、
子供の失敗や甘えや弱さに、しまい込んでいた過去の自分が重なってサイレンが鳴り響き、どうしようもない情動に駆られるのだと思います。
虐待を受けていた人は人格が歪むとか、愛情を知らないとか、そういう問題ではないのです。
脳が過去の脅威に対していつまでもサイレンを鳴らしていることが問題なのです。
これを解決するためには、次の3つのことが必要となっていきます。
①サイレンが鳴っていることに気づくこと
②トリガーに気づくこと
③過去をきちんと過去にすること
「完璧ないいこ」でいることで生き延びてきた人は「完璧なお母さん」になろうとします。
子供というのはたくさんの失敗を繰り返して成長するものなので、絶対に失敗しないように教育するなんて無理です。
そんな無理ゲーを無意識で完璧にやろうとしてしまうのです。
ここに気づいてトラウマを克服するには、根性とかでは太刀打ちできません。
私がトラウマを克服する際に使った方法は
「身体はトラウマを記録する(ベッセル・ヴァン・デア・コーク)」に紹介されている
・内的家族システム療法
・ヨガ
この2つを主に使いました。
これらに共通することは「気づくこと」です。
箱の奥底にしまい込んだゴミに、
まずは気づくことが大切です。
そして、ゴミを全部かき出してキレイにして、やっと本当の大切なモノをしまう箱になれるのです。
しまい込んだゴミに気づくことは、とても悲しくて怖くて辛い思いもするでしょう。
でも、過去をきちんと過去にすることをしないと無意識のうちにいつまでもトラウマを繰り返してしまうのです。
長くなってしまったので、詳しいやり方については、また別の記事で紹介したいと思いますが、これは即効性のあるものではありません。
じっくりと時間をかけて向き合ってようやく解決できるものです。
日常に追われて、そんな時間ないよ~という人がほとんどで、
なんとか堪えながら頑張っている方も多くいると思います。
そんな方は無理してトラウマ克服を目指さなくてもいいので
ぜひ、日常に無理をしないように意識的に身体を休めることを心掛けてください。
頑張りすぎてるかも、と思ったら思い切っていったん手を休めて
身体を温めてゆっくりとストレッチして休んでみましょう。
自分の疲れにムチを打たないことが何よりも大切です(^^)
トラウマを抱えてない人にできること
また、トラウマサバイバーを支える人やトラウマを抱えていない人にもできることがあります。
それは、どんな人にもゴミを投げないようにすることです。
誰しもイライラしたりして誰かに怒りをぶつけてしまいたくなることもあります。
でもネガティブもポジティブも必ず連鎖しています。誰かにネガティブなモノを投げたら、どこかで必ず他のネガティブが生まれます。
自分から率先して誰かにポジティブなモノを投げることで、どんどんポジティブの連鎖が起こります。
ポジティブなモノを人に与えることができる人が増えたら、きっと色んな人を救えるんじゃないかなぁと思います(^-^)
現在、トラウマセンシティブヨーガというヨガのインストラクターになるため日々修行中です!
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