『花束みたいな恋をした』を観て、オタ活と恋愛について考えた
土曜日、映画『花束みたいな恋をした』を観た。
私は恋愛経験がかなり乏しいし、恋愛系のドラマや映画を見ると感動よりも共感性羞恥が勝ってしまいがちなタイプなので、正直それほど期待していなかったのだけれど、図らずもこの映画を観て共感し考える部分があった。
というのも、私はここ数年お笑いという「推し」に非常に多くの情熱と愛を寄せていて、(ガチ恋ではなく推しが幸せだと自分も幸せなタイプのオタク)そういう広い意味での「好きという存在」がいることの意義と、己の恋愛観への影響を感じたので、以下つらつら書いてみる。
この先、一部ネタバレ(大まかなあらすじや作中に登場するフレーズなど)があるのでその点だけご容赦ください。
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この映画を見て一番感じたことは、「いつか終わる『好き』も、人生にとっては必要である」ということだ。
自分の話になるが、私は恋愛がかなり苦手だ。それは、「別れてしまえばそれまで費やした時間が0になるのに、一緒に行った場所や食べた料理、相手が好きだった音楽という記憶は自分の中から消えなくて、それを思い出した時に苦しくなるのが本当に嫌」という思いが根底にあるからである。
だからこそ、友達という半永久的な関係性はとても心地が良いし、一生連絡を取り合いたい友達はそれなりにいるのだけれど、恋人という終わりがある関係性にはどうしても惹かれなくて、恋人は長いこといないし出来てもあまり長続きしないタイプだった。
そんな恋愛観を持つ私がこの映画を見て、「それでもやっぱり、いつかは終わる愛も必要なんだな」と思った。そのきっかけとなった作中の言葉が2つある。
「恋愛の始まりは、終わりの始まり」
「綺麗な思い出だけ、宝箱に入れておくね」
1. 「恋愛の始まりは、終わりの始まり」
映画序盤、恋愛生存率という架空のブログ内でこの言葉が登場した。それに続き、「恋愛はお互いの好きなものを持ち寄って開くパーティーみたいなもので、いつか必ず終わりが来る。でも、終わりを意識してパーティーに参加する人はいなくて、参加者は皆今この瞬間の楽しさを享受しているだけなのだ(うろ覚え)」みたいなフレーズがあった。
これを聞いてなるほどなあと思った。私はオタ活のモットーに「推しは推せる時に推せ」を掲げているのだが、確かに好きな芸人さん(=推し)を応援する時に、「いつか解散してしまったら...」とか「いつか私がこの芸人さんをそこまで好きじゃなくなるかもしれない」なんていう思いを持ったことは一度もない。今好きだから心から応援する。今推したいから推す。お笑いというオタ活をする際に終わりを意識することがないように、恋愛も始めから終わりを意識する必要はないのかなと思った。
『花束みたいな恋をした』というこの映画のタイトルも、色々な解釈があるだろうけれど、私はパーティーの理論と同様「この瞬間の刹那的な美しさを大切にする」という意味なのかなと思った。
花束はいつか枯れる。でもお花屋さんで花束を選ぶ時、枯れた後のことを考えて買う人はいない。誰もが今、目の前で美しく咲いている花を見て心を躍らせているだけ。この花束に対する感情は、私のオタ活の姿勢である「応援する時に終わりは意識しない」という思いと同じだなあと思った。
2. 「綺麗な思い出だけ、宝箱に入れておくね」
映画終盤、菅田将暉(麦くん)と有村架純(絹ちゃん)が別々の人生を歩んでいくことを決めた時、この言葉が登場した。先述した私の恋愛観において、別れた元恋人との思い出は苦くて消し去りたい記憶なのだけれど、彼らにとっての思い出は綺麗な宝箱に入れるに値する記憶なのだ。
人生の宝箱の中身は、多い方が良いに決まっている。他人となった元恋人との思い出を、綺麗な過去にするか消し去りたい過去にするか、もちろん付き合っている間の時間や記憶の質にも左右されるだろうが、ほとんどは自分の考え方次第な気がする。人生における苦い記憶を増やしたくなくて恋愛を避けている私は、実はすごく人生を損してるのではないかと思った。
というのも、私はこれまで何度も「推しがいて良かった!!!」と実感する時があった。その推しは何度も言うように今好きだから応援しているに過ぎない存在であって、それと同様に今好きだから付き合っている人がいるお陰で「恋人がいて良かった」と思える時があるのかなと思った。まだそういう経験はあまりないけれど。
この映画を見て抱いた「いつか終わる『好き』も、人生にとっては必要なんだなあ」という感情、この前の空気階段の単独ライブを見た後に感じた思いと近い。
愛していた恋人と別れる、応援していた芸人が解散する、毎週聴いていたラジオが終わる... 好きという思いは様々な形で終わりを迎えることがある。それでも「あの当時好きだった」という事実は消えなくて、そしてその「好きだったなあ」という記憶は人生を豊かにするのではないかなと思った。
だからこそ、今好きなものは本当に大切にしたいと心から思った。それが恋人なのか、推しなのか、コンテンツなのかは人それぞれだけれど、「好き」が多い人生は本当に素晴らしいと思う。
こうやって話題の恋愛映画を見て、自分のオタ活を肯定して、己の恋愛観をちょっとアップデートして今日は終わり。
これからもたくさんお笑いを見てラジオを聴いてグッズを買って、そしていつか「今好き!」な恋人ができたらいいな。
追記 : お世話になっているチケットよしもと、数え切れないくらい行ったルミネtheよしもと、そして天竺鼠の単独ライブも登場する『花束みたいな恋をした』、本当に素敵な映画だったのでおすすめです。
私は完全に無関係なただのお笑いオタクですが、良いものに出会うと布教したくなるのはオタクの性なので、予告編を観て気になった方はぜひ。
https://m.youtube.com/watch?v=I7BIENRbF2g