わかるとできるの間にあるもの(オープン社内報)
今回の社内ミーティングでは、「代表の広石の話は、なぜわかりやすく、なぜ難しいのか。」ということがテーマになりました。
そこであがったのは、「広石は、まだ自分が理解できていない構造について、わかりやすく実感をもてるように説明をする。だから理解できたような気がするけれど、構造そのものが自分の中に腑に落ちたわけではないから、実際に使いこなすのが難しい。」という意見。
これは、実際に講演会とかで広石の話を聞いた方が、その後におっしゃる話としてよく聞く話でもあります。
概念的に理解するということと、実践するということの間には大きな壁があり、だからこそエンパブリックは実践することのサポートに力を入れているのですが、この壁とは何なのかについて改めて議論しました。
繰り上がりの足し算と10進法
「概念を理解することと、使いこなすこと」というところから、子どもが繰り上がりの足し算を学ぶときを例に考えてみました。
8+5という計算をするためには、8を10にするためにあといくつ必要かということを確認し、2という数を確認する。そして、5を2と3に分け、8と2で10をつくり、残りの3と合わせて、13にする。というやり方があります。
やり方も説明を聞けばわかり、手順の一つ一つもそんなに難しいことでもない。それでも、実際に別の数字で繰り上がりの足し算をやってみると、うまくいかない。そういうことは実際に起こります。
この繰り上がりの足し算の問題に構造として存在するのは、10進法です。10という数をひとまとまりにして、数を表現していく方法が、今の社会の中では多く使われているということです。
ですが、ここで「10進法とはこういうものですよ」と概念を説明しても実際にできるようにはなるわけではありません。
それでは、子ども達はどうやって繰り上がりの足し算を身に付け、結果として10進法を使いこなせるようになっていくのでしょうか?
経験学習という学び方を身に付ける
概念を理解し、それを使いこなせるようになっていくには、基本的には経験学習しかありません。
この経験学習というのは、ただ反復するということではありません。
デイビット・コルブによって提唱された経験学習理論を引用すると、「具体的経験→内省的省察→抽象的概念化→積極的実践→具体的経験→…」というサイクルを、ぐるぐる回しながらバランスをとっていくことによって、新しい知を生み出していく学び方だと言えます。
8+5を計算する時に、8の後に2本足したところで指がいっぱいになるといった経験。一円玉8枚と5枚を持ってきて、10枚で10円玉に両替するといった経験。これらの経験をふりかえって、「いつも10だ!」と気が付く。それを「他の数字でも10ごとにまとめてみよう!」と思い、9+6といった足し算に取り組んでみる。そこでまた、10という数のまとまりに気が付き、今度は10を10こ集めた100という数に発展していく。
それを繰り返していくうちに、繰り上がりの足し算のやり方が使いこなせるようになり、10進法という概念が自分の中に蓄積されていきます。
新しい概念や構造を理解する時には、必ずこういった経験学習が必要になるのです。
経験学習を促すために大切なこと
社会の中で、仕事や活動として取り組んでいることの中で、どうやってもうまくいかないといったことがあるときに、新しい概念や構造が必要になるときがあります。社会の大きな変革があるときには、なおさらです。
この新しい概念や構造を、自分の中で理解し、活用し、応用できるようになっていくためには、この経験学習のサイクルをぐるぐると回ることが大切となります。
この経験学習を促すにはどうしたらいいのでしょうか?
それには、「興味を持ってもらう」「やってみたいと思ってもらう」ことが何よりも大切になります。
その人の目線に立ち、やってみたいと思うことは何か。その中で、新しい概念や構造を実践するにはどういうサポートが必要なのか。
エンパブリックは、この視点を常に忘れてはいけないんだと、改めて確認しました。
そして、実際に実践をしながら、新しい時代の知恵(インテリジェンス)を使いこなせるようになるための学びの場を提供していくこと。
その先に、一人一人がやりたいことを持ち寄り、ともに社会を創っていく未来があることを願っています。