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作品講評会の備忘録~指摘まとめ

これまでの作品講評会で出された指摘をまとめてみました。
「良かったところ」と「悪かったところ」に分けて、なるべく共通項で括ってます(作品をより良くしていくという趣旨なので、良いところの指摘が少なめですが・・)。
文末に配布された資料をいくつか添付しておきますので合わせて参考にしてみてください。
※都度更新していきます。

<悪かったところ>
◆作者の我が強すぎる~直接的な解説から描写へ
・(登場人物よりも)作者が前面に出てきてしまっている印象を受けます。作者の欲求(読者にこう感じて欲しい、こう思って欲しいという想い)がそのまま文章にされてしまっている感じがするので、読者の自由な読書体験が妨害されてしまっている気がします。

・小説というよりブログに近い印象を受けました。主張(作者が言いたいこと)の部分がかなり長いので、読者に向けてメッセージが伝えられているというより、読者が作者の不満や愚痴のはけ口になってしまっている気がしました。

・テーマの深遠さにかかわらず、作者がそれをうまく捉えられていないのかなという気がしました。不自然な乖離を埋め合わせるために作者の解説(理詰め)によって無理やりこじづけられているなという印象を受けます。

・具体的な動作や出来事に対して、心情の占める割合が多すぎるため、主人公に興味を持つことが難しかったです。

・ひらめいた勢いでそのまま書かれてしまった印象を受けました。どちらかと言えば作者自身のための構想メモのように思えます。立ち止まって、伝えるべきことを整理して、読者の目線に立って、じっくり言葉を選択して・・といった作業が欠けているのかなと思います。

・説明がくどすぎる。押し付けられている感じがする。


◆言葉に血が通っていない
・読書体験というよりも、表面的なテキストを読んでいるだけのような感じがした。頭では理解できるのだけど、身体のなかに入ってこない。おそらく、構図(章立てやプロット)が先に立ってしまっていて、それらを実現させるためのテクニックや言語化が優先されているからだと思う。身体的な感覚(身体的な確信のようなもの)が欠けてしまっているので、響いてくるものがなかった。

・日本語の生命力が殺されてしまっているのが残念だった。貴族のいた時代を描くのであればそれなりの描写力と想像力(当時の人の目線で描く力)が要求される気がする。


◆描写不足
・淡泊に描かれているのであまり想像力のない人にとっては「良く分からない」作品で終わってしまう気がする。すごく良い着想なのに、もったいないと思った。それぞれの登場人物に寄り添いながら、背景もしっかり描いていったらなかなかの傑作になる気がする。

・登場人物の行動原理(動機のようなもの)が見えてこなかったので、それぞれエピソードがもっとあると良かった。

・描写が雑だなという印象を受けます。もし「これでいいや」とおざなりにした箇所があれば、それを最後まで突き詰めていく姿勢が必要になってくる気がします。

・作者のひらめきが断片的に「安易な言葉で置き換えられている」だけの箇所が多く見受けられるので、それらを一つ一つ丁寧に描写すると良い気がしました。


◆作品としての一貫性
・読み終わった後に、あれは結局なんだったのか?という箇所がけっこうありました。作品全体としてテーマが希薄な(または描き切れていない)ためか、それぞれの出来事が繋がっておらず、額の中に別々の絵が何枚も入っているような印象を受けました。不明瞭な部分を肉付けさせていく作業を丁寧にやっていけば良い作品に仕上がりそうです。

・作者の思い付きがそのまま並べられているだけのような感じがした。雰囲気だけで押し通している感じがして、作品としての意図が見えなかったです。

・あまり考察がなされないまま書き出してしまったような印象を受けました。内容がちぐはぐになってしまっているためか、読んでいる途中で疲れてきてしまいました。

・平行する二つの物語りに繋がりが感じられなかった。二つの物語が必ずしも交錯する必要はないと思いますが、テーマ的な繋がりがなければ作品としての意味を持たない気がする。


◆その他
・複雑な言葉たちに囚われてしまっている印象を受ける。とめどない情報に雁字搦めになって身動きが取れなくなってまっているのでは?

・安っぽいドラマ仕立てになっている印象なので、もう少し構成を考え直すと良い気がした。

・冒頭で読者を引き込むための工夫が足りない(たいていの人は最初の数ページで読むか読まないかを判断すると思います)。

・誤字や脱字が目立つので、提出前によく推敲した方が良い。

・印刷したとき、ばらばらになってしまうのでページ数をつけて欲しい。


<良かったところ>
・けっこう分量はあったのですが引き込まれてしまいあっと言う間に読めてしまいました。描写も丁寧で、うまいなぁと歓心しながら読んでました。

・シュールでナンセンスな世界観が良かった。読者が酔ってしまうような、倫理観を揺り動かしてくる作品ですね。

・AIに小説を書かせたら、こんな感じになりそうだなと思った。試みが面白く、実験的に短編集の中にひとつ入っていたら興味深く読めると思った。

・文句なしに面白かったです。映画で言えば「アメリ」のような感じで、少年の閉じた世界がうまく表現されていました。

・諸行無常の響きがあってすごく良いと思う。少女の海への渇望が風船に乗って大道芸人の涙に帰する流れが見事です。

・霊的なものを失っていく人間の姿が、シンプルで秀逸。

・橋が別世界に繋がるメタファーとして登場し、少年が橋を渡ることによって世界の変化が表現されるのは素晴らしいとしか言いようがないです。初めて読んだ時は思わず息を飲みました。


<配布された資料をいくつか>

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