エッセンシャル・フュージョンという考え方
1.エッセンシャル・フュージョンとは?
例えば、カルシウムが不足していると感じた時、あなたならどうしますか?
いりこ(小魚)を食べる。
牛乳を飲む。
などと考えるかもしれません。
手っ取り早くカルシウムのサプリメントを摂取する人もいるでしょう。
ですが、カルシウムを体内に効率よく吸収するには、「リン」も一緒に摂取する必要があります。
いりこには、リンが含まれていますから、効率よくカルシウムを摂取することができます。
サプリメントで摂取する場合には、カルシウムのサプリメントと
りんのサプリメントを一緒に摂ると効率よく体内に吸収されます。
簡単に言うと、これが、エッセンシャル・フュージョンです。
「カルシウム」エッセンスと「リン」エッセンスを一緒に摂っただけで、フュージョンと言わないでほしいと思うかもしれません。
全く、その通りだと思います。
では、この場合、なぜフュージョンだというのか?
それは、体内に取り込むことによって可能になります。
カルシウムとリンは、一緒に体内に入り込むことで、スムーズに吸収され、骨を生成するなど、様々なカルシウムとしての効能が発揮されるのです。
つまり、エッセンス同士をつなぐ橋渡しとなる媒体(この場合は体内の機能)が存在することで、フュージョンされるのです。
これがエッセンシャル・フュージョンです。
2.必要なエッセンスだけ揃えればよいと思う誤解
エッセンスは必要不可欠なものだので、否定するのものではありません。
むしろ、積極的に取り揃えていくことは重要なことだと考えます。
問題は、取り揃えたエッセンスを無造作に取り扱ってしまうことにあります。
これは人間同士のチームの関係でも同じことがいえます。
例えば、プロ野球チームでも超優秀な選手を引き抜いて集めても必ずしも優勝できるわけではありません。
会社組織のチームでも、優秀だと言われる人たちをひとまとめにしたチームを作ったとしても、残念な結果になってしまうこともあります。
もちろん、超優秀な選手を引き抜くまくって集めたプロ野球チームは、草野球チームに比べれば、断然強いです。
会社組織のチームでも優秀だと言われる人たちをひとまとめにしたチームの方が、通常のチームよりも成果を出しやすいでしょう。
ですが、一人ひとりのエッセンシャルな能力の割には、チームとしてのシナジー効果が発揮されないため、このような印象になってしまうのです。
なぜか?
機能的に優位な必要不可欠なもののみを集めれば、純粋で最強なものになると誤解してしまっているからです。
必要不可欠なものは、逆に言うと、どれかが欠けても機能しなくなってしまうことを意味します。
誰か一人でも欠けると機能しなくなるチームって脆いと思いませんか?
無駄を省き、機能的に優位な必要不可欠なものとして作られた完璧なものは、実はとても脆いのです。
その脆さを孕んでいることに対し、メンバーは意識的・無意識的に影響を受けてしまい、本来のパフォーマンスを発揮できなくなっているのかもしれません。
3.あそびの重要性
必要最小限な機能性を追求しすぎるあまり、無駄を徹底的に排除してしまい、あそびの無い状況というのは危険な状況です。
無駄=あそび
では、ありませんが、気が付けばあそびの部分も排除されがちなのです。
自動車のハンドルのあそびも、駆動部分へのゆとりを持たすことにより、急激なハンドル操作を緩和する効果があります。
これがなければ、ちょっとしたハンドル操作で自動車の進行方向が変化してしまい、事故が多発してしまうでしょう。
あそび=ゆとり
は、必要不可欠なものでありながら、一見すると機能性とは紐づかないため、無駄とまでは言わないまでも軽く考えがちです。
ですが、あそびの無いチームや機械は、コストパフォーマンスと機能性に優れているように見えて、実はとても脆い状態だと言えるのです。
これと似た話で、「不純物」と聞いて、どういった印象を受けるでしょうか?
日本刀を作る際には、単に鉄を熱してハンマーで鍛えて作るわけではありません。
単なる鉄ではなく、玉鋼(たまはがね)というものを鍛えて作ります。
玉鋼(たまはがね)は、たたらと呼ばれる窯のようなものを職人たちが作成し、そこに砂鉄などを入れて熱していくことで生成されます。
砂鉄の入れ加減や熱し方に伝統的な技術があり、職人たちが交代で、熱し続けて、初めて上質な玉鋼(たまはがね)が出来るのです。
上質な玉鋼(たまはがね)に欠かせないのが、「不純物」なのです。
この「不純物」は、単に生成されればよいわけではなく、上質な牛肉のサシのよう「不純物」が生成されるように熱していくことに極意があります。
上質な「不純物」によって、刀職人がハンマーで鍛えても、適度な粘り気により、ひび割れることなく、最後には水が滴るかのような艶やかな日本刀を完成させることができるのです。
先程の「あそび」にも通じるものがあると考えられます。
上質な「あそび」により、適度な粘り気により、チームが強靭に結束し、成果を上げていくのです。
論理的な思考を追求しすぎてしまうと、機能性と無駄を排除することに注目しがちですが、同じくらい、「あそび」や「不純物」を入れ込むことが重要なのです。それも、上質な「あそび」、上質な「不純物」である必要があるのです。
まずは、あなたにとって、上質な「あそび=ゆとり」、上質な「不純物」が何かを考えてみてください。
そして、それを取り入れてみてください。
ゆとりや不純物を取り入れるという気持ちが、あなたの懐の深さを作ることになります。
そして、実際に、上質な「あそび=ゆとり」、上質な「不純物」が、
あなたが努力したこと、
勉強したこと、
経験したことのエッセンスを
しっかりと身につけるために貢献してくれるはずです。